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生涯かけてやるもの

とある日、「がんばれ社長!」読者の方から次の質問を受けた。

「武沢さん、メルマガはいつまで続けるおつもりですか。巨匠とよばれるような作家やジャーナリストでも、一定の年齢になると体力・気力ともに落ちて、創作活動がトーンダウンするというではありませんか。そのあたり、どのような見通しをおもちですか?」

突然の質問にちょっと戸惑ったが、次のように答弁した。

「メルマガ発行は、肉体的な年令とは無縁のしろものだと思っていますよ。僕にとって、『がんばれ社長!』は、作品とか創作活動とかではなくて、志の表現なのです。」

「志?」

「はい。メルマガ発行を自分に課して、自己成長と志を練る。これは弱い私が一人前になる必須習慣だと思っています。作者であり、読者でもあるわけで、これは私に欠かせないメルマガなんです。見てて下さい。これからも『がんばれ社長!』は、私の一部、いや全部だと思って続けますよ。」

「メルマガ発行が“志”なんですね。カッコいいですね」

「いや、カッコはどうでもいい。志は、生活習慣とリンクしている必要があります。そのリンク方法が私にとっては、『がんばれ社長!』の発行なのです。」

それから数日たって、『論語』に次のような一節を見つけた。


「おまえたちの志を聞かせてくれない」と、孔子は弟子の顔淵と子路に向かって問いかけたという。
彼らは、めいめいの志を述べた。すると、今度は弟子の子路が孔子に向かって「では、師の志を聞かせてください」と尋ねたそうだ。

それを受けて、孔子は自らの志をこう述べている。
「年長者からは安心され、朋友からは信頼され、年少者からは慕われる。これが私の志だよ」


この論語にある、“志を言う”という意味で付けられた『言志録』は、私のお気に入りの一冊。江戸時代の儒学者・佐藤一斎が42歳のときから書きはじめた、志の探求書とでもいうべき作品であり、名著のほまれ高い。佐藤一斎は、この作品を仕上げるにあたり、87年の生涯の半分に相当する40年の歳月と1,133の作品をつづっているのだ。

・言志録 42歳~53歳
・言志後録 57歳~67歳
・言志晩録 67歳~78歳
・言志てつ録 80~82歳

※「てつ」は本当は漢字なのですが、パソコンに入っていませんでした。

この四つの段階に分けて出版され、それを合冊にしたものが『言志四録』である。

この本の影響力は絶大だった。

吉田松陰、高杉晋作、勝海舟、坂本竜馬、西郷隆盛、佐久間象山、河井継之助など、維新回天の士でこの本の影響を受けなかった人物はひとりもいないとまで言われている。とりわけ、西郷隆盛は、百一則を抜き出して「言志録百一則」として座右の書にしていたという。

佐藤一斎師、おみごと。私たちは、老害をまき散らすことは断固避けるべきだが、みずみずしい精神がある限り、肉体年齢は重要でない。「オレもとうとう中高年だ」「トーンダウンしてきた」なんて、言ってはおれないのだ。


<参考:小田全宏著『日本人の神髄』(サンマーク出版)
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