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中国顛末記 最終章

中国での「信用」という問題

ある経営者から、こんな話を聞いたことがある。

「中国では、ものが売れても代金回収がままならない。日本のように約束通り支払ってくれる企業ばかりではないのだ。中国企業の支払い担当者は、いかに支払いを先延ばしするかという才能を誇っていることもある。だから、単純に日本での常識を持ち込んでビジネスしてはいけないよ。」

この企業でも中国での代金回収に関して、相当なご苦労をされたようだ。たしかにそうした事実が過去にあっただろうし、これからも一部の企業では、それがくり返されるだろう。
だが、国際信用経済のなかで、約束を守れない会社に明日はない。中国の中小企業でも、みずからの発展のためにも、信用や約束を重んじる必要に迫られている。それを間接的に促進するような法律が今年1月に施行されているのをご存知だろうか。

2003年1月1日より中国では、「中華人民共和国中小企業促進法」
(以下、「促進法」)が施行された。

中国での中小企業数は日本の3倍ほどにあたる800万社を超え、工業総生産額、売上高、輸出総額それぞれで国全体の60%ほどを占めている。また、中小企業での雇用は、全国の75%を占めており、中国といえば国営企業や大企業がリードしている感があるが、その実体は日本に近いのだ。

毎年中小企業の数は増え続け、国家経済における地位がますます高まってきた今年、とうとう中国初の、中小企業向け法律が誕生したのだ。

中小企業の発展を促進するための「促進法」の骨子は、

1.ベンチャー投資基金の設立などを通し、科学技術型中小企業の発展を援助し、技術革新の能力を増強する。
2.中小企業の信用システムと信用担保システムの構築。とくに、ハイテク企業の融資や上場手続きなどを逐次緩め、中小企業の資金調達手段をひろげる。
3.WTOの規則に基づいて、関係法律・法規を制定・改正し、市場参入、貿易、財政税務政策などの面で各種中小企業の発展のために平等競争の環境を作り出す。
となっている。

別の調査によれば、67%の中小企業は資金不足が最も主要な問題だととらえている。中国中小企業にとって、資金調達の道が広げられるということは、早晩、中国国内でも「信用」とか「実績」「評判」というものを強く意識したマネジメントが広がっていくに違いない。つまり、約束や契約を遵守するという当然のルールが、日本同様に、そのまま通用する国になっていくと私はみている。