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売場と職場は二大天国


ポストにくらべて人材が不足しているときは、「君も部長めざしてがんばって欲しい!」と言える。ところが会社が低成長になると、部長や課長、店長といった具体的なポストをめざすことがむずかしくなる。その座を狙おうにもその椅子は既にふさがっているからだ。

そんなときポストに替わるものとして、報酬(年収)、名誉(社内資格)、職務の魅力などがある。そのために人事制度に「社内資格」を設け、そのランクアップ(時にはランクダウン)の仕組みをつくって社員のやる気と名誉を刺激している会社は多い。

中国地方のインテリア雑貨販売の T 社は 3店舗あるお店で 70名ほどの社員が働いている。そのうち 10名が正社員で、60名がパートタイマーだという。独自の品揃えと売場づくりで業績は好調。ネット販売部門も最近始まった。社内的には、「家具」「キッチン雑貨」「リビング雑貨」など 8部門あり、それぞれの部門長はすべてパートさん。二代目の T 社長(45)はパートさんの能力や意欲を引き出すことが業績の鍵をにぎると考えてきた。

そこで、ファストフード業界や製造業、小売業などパート比率の高い業界のトップ企業を徹底的に調べ上げた。その結果、きわめて精密な人事制度があることがわかった。能力と意欲を引き出すには、パートタイマー用の資格制度が重要であることも分かってきたというのだ。

そこで T 社では、チャレンジ、教育、評価、面接、報酬を連動させた資格制度、「マスタープラン」を発足した。 5年ほど前のことである。T 社長と 約束したのでその詳細は公表できないが、簡単にいえば、パートタイマーを次の 5つのランクに分けてマネジメントする制度である。

・ホープさん(入社半年以内のパート)
・レギュラーさん(入社半年以上のパート)
・スーパーさん(特定業務の店内スペシャリスト)
・リーダーさん(部門長、副部門長)
・マスターさん(店長代行)

ランクアップのための条件も決められていて、年に 2回ある給与改定のときには上司と社長と本人による評価面談がある。レギュラーさんとスーパーさんの時間給は上限が決まっていて、何年在籍しようとも時給の上限を超えることはない。また、正社員と同等の賞与がもらえるのはリーダーさん以上なので、年収を増やしたいパートさんは全員がリーダー以上を目指すこととなる。

中には「年収を増やしたくない」「昇進を希望しない」という人も応募してこられる。だが、「将来、リーダーさんやマネジャーさんを目指してくれる人」というのが採用条件と知って辞退する人もいれば、考えを変える人もいるそうだ。

評価表の設計、評価面接のやり方、昇給(降給)のルールと賃金テーブル、業績開示の方法など細かいノウハウをたくさん蓄積してきたT 社。「売場と職場は私たちの二大天国」を重点方針に掲げている。

目標がないと人は仕事に馴れてしまい、飽きがでる。成果主義に走りすぎても人間関係がギスギスする。やる気を刺激し続ける方法にこれといった決め手はなく、この指止まれなのだと考える T 社。いまでも「マスタープラン」の完成度向上に余念がない。

T 社長曰く、「パートさんが安心して働ける職場、しかも、目がイキイキと輝ける職場をつくることは、売場を作ることとまったく同じ次元で重要なんです」そうした T 社長の想いと施策はいまのところ見事にヒットしている。