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アップルの租税回避

昔から「リベリア国籍の日本船」というものがあったし、タックスヘイブンの国に資産を移す知恵は誰もが知っている。知っているだけでなく、それを実践している個人や企業も多いだろう。

だが、アップルのような世界企業が露骨にそれを行うと糾弾される。アップルの CEO ・ティムクック氏(52)は米上院から喚問され公聴会に出席した。海外に資産を移して不当に税金を回避している、という嫌疑である。当然のことながらジョン・マケイン氏をはじめとする議員団はデータをあつめ、クックをやりこめる準備を整えて会に臨んだ。

まず、上院行政監察小委員会のカール・レビン委員長は、「アップルは米連邦法人税の支払いを逃れるために巨額の利益を海外に移転した疑いがある」と指摘した。そして「 2012年だけでも 90億ドルの法人税支払いを回避した可能性がある」と訴えた。

これに対しクック氏は、「アップルは 2012年の連邦政府への法人税納付が現金で約 60億ドルに上る高額納税企業である」と反論。さらに、「 2013年の納税額はこれを上回る規模になる見通しで、アップルは支払うべき税金は 1ドル単位まで正確に支払う」と強調した。

しかしレビン委員長は、アイルランドにあるアップル子会社が過去5年にわたり、どの国にも法人所得税を納めていない点を指摘。法の網をたくみにすりぬけ、「課税逃れの聖杯」を探求していると指摘した。

共和党のマケイン上院議員は「ひどすぎる」と非難したが、クックは「私たちは法律に従っている。デジタル時代に法律が追いついていないのだ。それにアメリカの法人税が高すぎる」と開き直った。

結論は出ずに、双方が主張しあった格好だ。これをきっかけに米国をはじめ世界諸国の法整備がどこまで進むのか、注目される。

『日経ビジネス』(2013.6.3号)では、「アップルの評価高めた新指導者」としてティムの公聴会対応を評価している。

アップルの公聴会喚問ニュース
http://www.youtube.com/watch?v=Krq42An_PEE