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ASEAN に注目

東京の「塚田農場」(居酒屋)に行ったとき、「これ貼っていただけるとうれしいのですが・・・」と女性スタッフがシールを見せた。三色あったが、どれもハート型をしている。ハートの中には店名と電話番号が印刷されていて、それをスマホなどに貼ってくれというわけだ。

どうせ後から剥がせるわけだし、その場にいた全員が「いいですよ」とスマホや携帯に貼ることにした。いざこうして貼ってしまったら、なかなか剥がそうとは思わないもので、むしろあちこちでそのシールを見せている自分がいる。

なるほど、こうやってリピーターやクチコミを作っていくわけかと今さらながら感心したものである。

『日経トップリーダー』2013年 7月号は「ASEAN が呼んでいる」という特集テーマだ。あなたの会社を ASEAN が呼んでいる。極めて低いコストで、可能なかぎり低いリスクで ASEAN 進出を果たしている中小企業が紹介されているのだ。

ASEAN とはタイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナムなど 10か国が加盟する地域協力機構のこと。本部はインドネシアのジャカルタにある。

巨大なマーケットを抱える中国やインドも魅力的だが、親日的な国々が多い ASEAN は世界市場の玄関口として最初に進出するにふさわしい地域として魅力を増しているというのだ。

ASEAN とひと言でいっても国情は違う。たとえばインドネシアの場合は「ネットビジネス王国」。先ほどの「塚田農場」の場合は「シールを貼って下さい」というカワイイものだったが、ジャカルタ(インドネシア)ではそれが SNS になる。「このステーキを食べた後につぶやいてくれたらデザートのティラミスが無料になります」というのだ。

インドネシアは Facebook のアカウント数が米国に次いで世界二位の国である。最近、急速に豊かになった富裕層や中間層が固定電話やパソコンを素通りしていきなりスマホを持つ。それと同時に SNS のアカウントも取る。当然、ネット関連ビジネスはマグマのような熱気で立ち上がっており、半歩先を制するものが覇者になれるといわれているそうだ。

「一歩先では早すぎる。半歩先でなければならない」というビジネス常識があるなか、「いや、一歩先でも早すぎるとは思わない。むしろ三歩先に行って耐えていなければならない」というビジネスもある。果たしてどちらが正しいのかは分からないが、日本でも 10年前にはそうした議論で沸騰した時もあったように思う。

・日本のスーツがシンガポールで売れている
・インドネシアの富裕層で料理学校が流行っている
・鮮魚流通はこれからの分野
・イスラム文化では巨大な「ハラル市場」を狙え
・出資金 30万円でタイに拠点が持てる

など、熱気ムンムンの特集になっている。

我が国、我が地域、我が業界だけに固執せず、経営者は異なるものに触れて事業アイデアをたえずみずみずしいものにしておきたいものだ。注目の ASEAN、お手軽に「ASEAN 弾丸縦断ビジネスツアー」のようなものがあれば参加してみたいが、現実的には時間がかかって大変なのだろう。

私もこの秋、ASEAN の大国・タイに行く予定を組んでいる。