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社長のブランド価値

11月中旬、日本経済新聞一面の三日連続特集「ザ・ディスクロージャー」が興味深かった。この特集は、上場企業を対象にした調査「現在の社長が就任してから今年10月までの間にどれだけ時価総額を増やしたか」のランキングがもとになっている。

まずランキングからご紹介しよう。( )内の数字は、同社長が就任後に増やした時価総額であり、その右が社長就任後の経過年月である。(※時価総額とは株価×発行株数のこと)

一位:武田薬品 武田国男社長 (3兆4千億円) 9年4ヶ月
二位:NTTドコモ 立川啓二社長 (3兆3千億円)4年4ヶ月
三位:キャノン 御手洗富士夫社長 (2兆5千億円)7年1ヶ月
四位:日産自動車 カルロス・ゴーン社長 (1兆8千億円)2年4ヶ月
五位:信越化学工業 金川千尋社長 (1兆1千億円) 12年2ヶ月

これら5企業の5社長は、株安という逆風下、見事に時価総額増加額で「1兆円クラブ」入りを果たした。業績が良いから株価が上がり、時価総額も増えるわけだが、単純にそれだけでは済ますことができない。この特集の結論がふるっているのだ。なんとそれは、『社長で決まる企業価値』というものだ。とうとう上場企業においても、社長一人の能力で企業価値やブランド価値が大幅に変動する時代が到来したという。

はるか以前の高度経済成長時代、社長は帽子と同じが望ましいとされたものだ。なぜなら、先が読めるという意味で平穏な時代であり、社長も帽子もその存在が目立たないのが上等だという論理だ。そんな話を聞いてうなずいていた時代がなつかしい。平時ならでは話だ。

今や乱世だ。帽子と同じような社長が率いる企業がどのような末路を迎えるかは昨今の牛肉偽装事件などでも明らかだ。日ハム、雪印乳業は、トップ自ら対処すべき経営危機に、なすすべもなく後手の謝罪に終始しブランド価値を失墜させたではないか。今や、投資家にとっては社長個人がひとつのブランドだ。

さて、『社長で決まる企業価値』というこの結論だが、社長の何が問われるのだろうか。先にあげた5社長に共通している点は、いずれ劣らぬ論客であり、明快なメッセージを社内、顧客、投資家に発信してきている点にある。従って、明快にビジョンを物語る能力こそが経営者の実力、との結論になっている。

「帽子社長」ではなく、トップ自らがビジョンを指し示し、その実現を確信込めて、論理的に語れる能力が大切なのだ。これは大企業だけの話ではない。中小企業の経営者には、とりわけそうした能力が求められるはずだ。

さらに付け加えるならば、自分流の経営スタイルもしくは経営哲学を確立することが大切だ。先の上位五社は、それぞれの社長独自のスタイル・哲学が存在する。彼らは自らの経営に自信をもっているだけでなく、その実績があるゆえ、聞き手はそれを信用する。

この年末年始、あなた個人のブランド力を社内外に高めるためのアクションプランを充分に練り上げようではないか。