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ビジネスやってるんだ!

A社のサイト構築会議に加わった。ここはビルの清掃・管理会社であり、今から新たにサイトを立ち上げ成功させていくという。よほど斬新な着想がなければアクセスを集めることができないことは、充分ご存じの社長だ。今回のアイデアは勝算あり、と自信満々なのだ。

まだ公表できないが、「あっ、なるほど。そういう作戦かぁ。」と唸るほどの切り口だ。一枚肉のステーキを食べ慣れた私が、さいころステーキに出会ったような感動だ。小さく切って食べやすくしてあげることで、まるで別の食べ物になる。プロジェクトに参加した私の感情的情熱も一気に高まった。

ところがそこから後が冴えない。

プロジェクトリーダーの主旨説明のあと、サイト構築業者からラフデザイン案が提出された。次いでA社側の担当リーダーからは、コンテンツ案が出された。それらの発表が進めば進むほど私は情熱が失せていった。

なぜなんだろう。さっきのテンションが落ちていく。彼らの会話を聞いていると、

・「こんなコンテンツにしたら凄いんじゃない。」
・「このデザインは、こんな感じに変えられないかなぁ。」
・「こんなコミュニティを作ってあげれば、このページにはバナー広告依頼がくるだろうね。」
・「ここはメールフォームにしてあげたほうがイイよね。」
・・・

延々と話題は尽きない。
そういえば、私だけでなく社長も無口になってきた。やっぱり何か変だぞ。
「よいサイトにするためには、やっぱり立派な会社案内が必要だよね」という発言が出た瞬間に私は、ここで水を差そうと決断した。

退席の時間が迫っていたせいもあるが、皆の盛り上がりを制して次のことを申し上げた。

・・・我々はサイト構築の前に、まずビジネスをやってるんだ。私の理解では、今日は制作の打ち合わせではないはず。サイトで何をしでかそうかというアイデア会議だと聞いている。ビジネスとして、いかに新しい顧客を創造するか、そのためにサイトで何ができるかを検討しようとしている。
まだ見ぬ顧客に対して、どんな内容のものを提供でき、どのようなリアクションを引き出し、どんな結果をいつまでに望めるのか、その数字目標を確認しよう。それを抜きにしていきなり制作の話をしても地図のない登山になってしまう。

一瞬ムードはしらけたかもしれないが、その目標が共有できれば、お互いのスピード感や価値観が近寄ってくるのだ。こうしたビジネスの視点は、経営者だけでなくサイト構築会社のスタッフももっていないと作業はできないはずだ。なぜならば、サイト構築という作業は、顧客創造と顧客満足の手段であって、趣味ではないからだ。ビジネスだ。採算性と収益性を確認しつつ、コツコツと積み上げていくのがサイトのはずだ。緒戦でつまずくわけにはいかない。