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社長不要

質問1.
「この会社でもっとも事業に貢献している人は誰だと思いますか」
質問2.
「その逆に、もっとも貢献していない人は誰だと思いますか」
質問3.
「あなたがもっとも尊敬している人(社内)は誰ですか」

毎年2回、「従業員意向調査」を行うなかでこの三つの質問をしている会社がある。東京の製造業A社(従業員80名)だ。調査しているだけではない。その結果をすべて社内に公表している。そのことだけでもずいぶん驚いた私が、さらに驚くことを聞かされた。

質問2の「もっとも貢献していない人」の最新調査結果で、首位の座にこの会社の和田社長(仮名)が選ばれた、というのだ。10月某日、この会社の定例幹部会議に参加したあと和田さんから、ちょっと一件お付き合いを、とあいなった。きっと首位に選ばれたことの反省の弁が聞かれるに違いない。二人でホテルのラウンジに向かった。
ところが、

「武沢さん、私は昔のようなパワーはもうないし、あと何年かはこんな感じで適当にやっていきますよ。そんな人生もまた悪くない。」

「えっ、和田さん。何かあったのですか。まだまだお若いでしょ。昭和20年代半ばですよね。老け込むのはいかにも早すぎる。適当に、なんておっしゃらず、何か悪だくみを考えましょうよ。」

「悪だくみですか、ふむ。もちろんそんな気分は持ち合わせてはいますが、気分だけではねえ。何か面白くてわくわくするような知恵が最近でなくなっちゃって。」

「社長、そこ。それですよ。その今のお気持ちそのものが今回のランキングで表れたのですよ、きっと。」

このA社は有能な若手幹部が育っており、日々の業務運営は彼らが取り仕切っている。仮に社長が1週間海外出張しても何も困らない。従って社員からみれば、社長がいてもいなくても業務運営にはまったく関係ないかのように写るのだろう。

この社長、和田さんは今どんな誤りをおかしているのか。その答えは明白だ。

一昨日のマガジン『成功の拒否』で、ドラッカーが指摘する起業家四つの誤りのうちの一つをご紹介した。
その四つとは、

1.成功の拒否
2.利益志向
3.マネジメントチームの欠如
4.自らの役割の喪失

である。(『ネクスト・ソサエティ』ダイヤモンド社刊 より)

ここでは社長個人の人生のあり方を考えているのではない。経営者として組織をリードする上で、自己中心的な価値観ではいけない、ということだ。

会社は社会の器、つまり公器である。したがって、自分が何をしたいか・したくないかではなく、この会社にとって今なにが必要なのかを定期的に考えるくせをつけよう。
四半期単位で事業を見直すようなシステムを作り、そのときに問いかけるようにしよう。
「今、この事業にとって何が必要か?」

この問いを発し、回答していくことで和田社長は冒頭の不名誉なランキングからおさらばできるはずだ。

それにしてもこの調査、おもしろい。