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いかに狂うか

今日は狂い方について考えてみた。

社長なのに会社のビジョンが語れない、せっかく作った経営理念が単なるお題目で終わっている、という会社が多い。多いなんていう生やさしいものではない、ものすごく多い。これを何とかせねばなるまい。

そんなことを思っていた、今朝の徒歩通勤時。
ヘッドフォンで江川ひろし先生の話し方講座のCDを聞いていたら、ある箇所にさしかかってピーンとひらめいた。

それは「外面的要求」を「内面的欲求」に変えるという技法だ。アガってしまうことを防ぐためのもので、その主旨はこうだ。

あなたが、親友に頼まれて結婚式の来賓スピーチをすることになったとする。本音ではスピーチを避けたい。でも立場上そういうわけにはいかない。やる以上は、きっちり祝ってあげようとスピーチの準備をした。紙にセリフを書き出して自宅で何度かリハーサルをした。ところが、イザ本番5分前になるともう自分が自分ではない。緊張は最高潮に達し、用意した原稿のほとんどが無意味になり、しどろもどろで話を終える。

これは、頼まれたことを果たす=「外面的要求」、のまま話を始めたことによる失敗だ。

「外面的要求」を「内面的欲求」に切り替えよう。それは、話させてくれ、という気持ちになろうということだ。そんな方法が一つある。

それは、準備と練習なのだ。

話の要点を紙に書き出し、制限時間のなかで話を終えるように声に出して何度も練習する。しかもそれを、くり返しくり返し最低30回。できれば百回練習する。するとどうだろう。

早く話をさせてくれ!順番はまだか?

という気持ちになるのだ。ウソだと思う人は試してみるがよい。私は体験済みだ。

私も人前でアガッてしまったとき、必ず得意な持ちネタを語ってペースを作る。いくつかの素材があるが、これらの素材はすでに何百回と語ってきた話であり、必ず大多数の聞き手を惹きつける話だ。くり返し話してきたことで、うまくやれることが証明済みなのだ。この原理を会社経営で応用するのである。

会社のビジョンを語る能力や、理念・哲学を語る能力は、その本質において特長がある。それは、まだ誰も見ていない世界であり、心に信じることが出来るか否かという世界だ。
『虚構』とも言えるし、ホラやハッタリと近い。そうしたことが真剣に出来るのは、上記のような徹底したくり返しによる以外に方法はないのではないか。
あらためて「今日の言葉」を読み返していただきたい。

社長がいつも同じように熱っぽく未来を語り、理念を語る。通りいっぺんの話ではなく、ものすごく熱い。社長が何かに狂っている。そんな状況を作るのは、社内システムや制度の問題なんかではない。社長が自らのビジョンに対して「内面的欲求」をもって語っているか、それとも単に「外面的要求」で未来を語っているかの違いだ。

頭脳明晰な社長も、そうでない社長もいる。作文のうまい社長もいれば、文章能力ゼロに近い社長もいる。説得力抜群の社長もいれば、話はまるで下手な社長もいる。
だがそれらの条件は、ビジョナリーであるか否かに直結しない。直結するのは、くり返したかどうか、の一点である。

江川先生の日本話し方センター http://www.ohanashi.co.jp/