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劣後順位

私の友人の早崎速男君(仮名)は、その名の通りスピード感あふれる素早い仕事ぶりが信条だ。「シューッ」といつも口からジェット音のような音を出しながら仕事をするので、仲間から「シュー」と陰口をたたかれている。30才になったこの春、念願かなって行政書士事務所を独立開業した。

いつもカラーザウルスとノートパソコン「Muramasa」を併用する彼は、「ビジネスはスピードに尽きる」が口ぐせ。彼と一緒にお酒を飲むときは、まず終わりの時刻を決め、議題を決めてから飲みはじめることが多い。そして定刻になると腕時計のタイマーがなるようになっている。ちょっとイヤな感じはするが、彼のスタイルだから尊重している。

そんな早崎君と先週お会いし、開業後の成果などをお聞きしたが、決して順調とは言えないようだ。

こんな会話があった。

早崎「武沢さん、第一四半期を経過して業績目標に対して7割くらいのペースで推移しています。満足はしていませんが、ものす   ごく出会いとかチャンス・可能性を感じていますので今後の見通しは明るいですよ。」

武沢「素晴らしいですね。独立する前よりも顔色が良いものね。ところで今の優先順位を聞かせてよ。」

彼は“待ってました!”とばかりに、「Muramasa」とパワーポイントを起動し、私にビジネスプランを見せてくれた。拝見するかぎり、たしかに今後の優先順位が実に明確になっている。そこで次のステップの質問をした。それは、「劣後順位は?」という質問だ。

「劣後順位」とは、優先順位と逆の意味で使われる。やらないこと、やってはいけないことのリストだ。彼がすでに計画してある目標に到達するためには、何をすべきかと同時に、何はすべきでないか、ということも決めておかねばならない。

それはなぜか。

スピード感あふれる仕事スタイルがいかに立派であっても、時間管理がいかに上手であっても、お客がいなければ成果に結びつかない。

別の表現をすれば、「効率的」と「効果的」とは別物であるということだ。
私たちも、自分の仕事のスタイルや進め方にこだわるあまり、仕事の質の向上やセールスを最大化することに知恵が回っていないケースを散見する。

効率的かつ効果的であり続けるためには、目標と実績の誤差を招いている要因を注意深く見つけ出さなければならない。その姿は、あたかもレントゲン写真を見つめる医師のようである。そのときのチェックポイントのひとつが、

・優先順位と劣後順位は明確でそれに忠実であるか?

ということである。