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過ぎてかえらぬ不幸を悔やむ 余話

絶えず競争に身をさらすのがプロスポーツの世界。たとえ今年、三冠王を取ろうが、来年打てなくなる可能性はある。そんなとき、替わりになるサブの選手が何人もいるのが強いチームである。選手層が厚いチームは一年間通して安定して強い。反対に選手層が薄いチームは主力選手が不調になったり怪我で欠場するとチーム力が大幅にダウンする。

会社経営もそれに似ている。

昨日号のメルマガに対して何通かメールを頂戴した。特に、ホームページ制作担当の U 君を辞めさせたくだりにご意見が集中しているが、中国・東莞(とんがん)の林さんから寄せられたメールをご紹介しよう。

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昨日号の N 社長の最大の間違いは、会社の業務を個人に依存する形にしてしまった事です。人材が豊富な大会社ならば、こういう問題はあまりないでしょう。トップ人材の U 君が辞めれば、ナンバー2、ナンバー3が次は自分のチャンスだと、パフォーマンスをあげて仕事をするでしょう。中小企業の場合、ナンバー2、ナンバー3がいる状況を作るのは、普通に経営していては難しいと思います。

しかし工夫は出来るはずです。社内どの位置からでも上を狙える様にする。こうしておけば、U 君が出て行ったら「待ってました」と言う人間が出て来るはずです。360度成長チャンスを準備出来るのは、中小企業のメリットかも知れません。

ヒトに依存しないシステムを作る。今回の事例では、誰でもホームページの更新が出来る様にしておけば良いはずです。むしろこうなっていないのは U 君の力量が足りないからです。U 君が向上意欲が高ければ、今の仕事を他の人間に手渡して更に上を目指す体勢を準備したはずです。これは業者にホームページ作成を依頼するときも同じです。ホームページ業者も、顧客に依存させる様なサービスを提供すると、一見経営が安定する様に見えますが、その様な多くの顧客(多分顧客単価は低い)を抱えたまま次のステップに経営をレベルアップする事が難しくなります。
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★東莞の林さん http://www.quality-mind.com/

林さんのメールにある「ヒトに依存しないシステム」というのは大切なキーワードである。正確にいえば、特定個人に依存してしまった時点ですでにそれはシステムとは言えない。システムでないとしたら、それは何か。それは、そのヒト一代限りのノウハウということである。高度なことは特定個人に負うことがあるにせよ、ある程度のことは複数の人がやれるようにしておこう。そして、誰がやっても同じような結果が得られるようにしたものがシステムである。

ジャイアンツでいえば、村田が故障したら中井か寺内がサードを守り、二塁を脇谷か藤本が、一塁をロペスか亀井が・・・、という具合にサブやサブサブがカバーする。それが一年間戦って勝利するためのシステムであり、プロスポーツでは当然のことである。このことが中小企業の経営においては少々希薄であることが N 社長の惨劇を招いたともいえるだろう。

今日のキーワード:ヒトに依存しないシステム