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人生の三つの指針

人生の目的は何だろう?

「そんなものはない。ただ生きればいい」と教える人もいるし、「それを見つけるのが人生だ」と言う人もいる。仏教では「自己究明」「生死(しょうじ)解決」「他者救済」が人生の三大目的であると教えている。

「自己究明」とは、自分は何者であり何をすべきかを知り、それを追究する生き方をいう。「生死解決」とは、生き死にの問題を知識で理解するだけでなく肝の奥底から悟り、覚醒して生きること。「他者救済」とは、そうした生き方を教えて縁のあった人を救うことであると私は理解している。自分を追究することと、人を救うことは分かるが二番目の生死を悟ることとはいかにも宗教らしいところでもある。

では、宗教ではなく学問では人生をどのように教えているのだろうか。心理学者エドワード・デシとリチャードライアンは『自己決定論』のなかで人間の基本的な欲求を「関係性」「有能感」「自律性」の三つであると説いている。(『やってのける』大和書房 より)つまり、「関係性」とは、他人との関係のなかで自分の居場所や役割を得たいという欲求。「有能感」とは、人から「さすがですね」と認められるような何かを持ちたいという欲求。「自律性」とは、他人から拘束されず自由にやらせてほしいという欲求。この三つを我々は欲しがっているのだという。

そして、仏教の三大目的と心理学の三大欲求には類似点がある。

仏教の「自己究明」とは、心理学の「自律性」のことであり、
仏教の「生死解決」とは、心理学の「有能感」のことであり、
仏教の「他者救済」とは、心理学の「関係性」のことである。

もちろん、会社経営にもその教えは通用する。

他者救済・関係性とは、顧客やステークホルダー、業界、地域と良好な関係をつくっていくこと。生死解決・有能感とは、独自のポジショニングを得て社会からなくてはならない会社になること。自己究明・自律性とは、独立企業として誰の言いなりにもならず、自由意志で経営すること。

もし仮に、この三つが満たされなくなったとき、個人や企業はどうするか。それは虚飾に走ることになる。満たされていない欲求不満が「私は有能です、私はたくさんの人に必要とされています、私は自由に生きています」ということを必要以上に外部発信することになる。それが行きすぎると、人生の偽装表示に人を走らせることになる。

もういちど来年目標をこの三つの指針で考え直すことにしよう。