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H社長のリーダーシップ改革

Rewrite:2014年4月1日(火)

株式会社H建装は、内装工事を主体とする会社だ。女性社員が多く、個性的な感性がゼネコンや施主から評価され、創業以来30年間、堅実に社業を伸ばしてきた。現社長のH氏(38才)が二代目社長に就任したのは数年前のことである。

「先代が病で倒れ、一番むずかしい時に社長に就任しましたが、専務時代が10年間ほどあったのでやれる自信はありました」

しかし、現社長が就任以後、売上は減り続けている。経費削減などによって赤字は2年で脱出できたが、今なお成長戦略が描けていないという。そこで、来期以降の経営計画を作ろうということになり、H社長から作成の指導依頼があった。

会社を訪れると社長室の壁には大きく「民主経営と自主的仕事」というスローガンがかかっている。意味を尋ねると、一人ひとりが自分の仕事に関してプロになり、会社経営は全体の総意のもとで行われるというのだ。事実この会社では、合意の形成にもっとも時間が割かれ、特定の誰かに権限が集中することを避ける風潮がある。社長といえども然りだった。

経営会議に出席して驚いた。定刻16:00に始まった会議は定刻18:00になっても終わらない。それどころか、18:00になると弁当が出た。私は次の予定のために弁当は辞退し、退席せざるを得なかったが、閉会は21:00だったという。
会議時間が守れない理由は一つしかない。決めるべき立場にある社長が決めないからだ。合意形成に時間をかけすぎている。

この会社に必要なことは、“何をやるか”ではなく、“どのようにやるか”なのだ。

「皆が賛成するからやる」「皆が反対するからやめる」「皆が納得するまではやらない」というリーダーシップのスタイルを改める必要があるのだ。それは社長のリーダーシップだけではない。リーダーシップを取るべき立場にある人すべてだ。

メンバーの合意によってしか意思決定できない人物や、一般的な意見は述べるが自分なりの信念と決意に欠ける発言しかしない人物では今の難局は乗り切ることが出来ない。
同意させていくのがリーダーであって、意見の一致を求めようと時間を浪費するのはリーダーではない。

H建装の経営計画は、社長のリーダーシップ改革をともなったものでなければならないのだ。