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ある優良企業の経営哲学

Rewrite:2014年3月26日(水)

優良企業を調べると、そこには必ず優良な経営者がいる。先日訪問したある会社は、優良企業のひとつとして地域および業界では有名な会社だ。名古屋に本社を置き、毎年高額納税を続けるこの会社は、グループ企業15社をもつ。そのトップに立つY氏(58歳)の経営方針は明快だ。

1.新会社を設立するにあたっては、資本金と同額の預り金を集めるべし!
2.新会社の創業メンバーには、管理に明るい人材を加えるべし!
3.ものは何処よりも安く買い、人は何処よりも高く買うべし!
4.幹部の登用は、その人格の高さと遵法精神を重んずべし!
5.社員はまず、年収の半分の貯蓄をすべし!
6.日銭商売にあっては、借金は避けるべし!
7.2期連続して赤字の部門・店舗は、潔く失敗を認め、撤収すべし!
8.事業の拡張計画は、人材の成長スピードを最優先に考慮すべし!
9.ブームには乗るなかれ!
10.時には社運をかけた挑戦を行い、社内に緊張をもたらすべし!

すこし補足しよう。
「1」について
この会社独特の方針だが、理にかなっている。新会社が最初につまずきやすいのは資金の問題だ。資金がないから人も物も充実しない。なぜそうなるのか?それは資金見通しの甘さである。資本金の大半が開業費用で消えた、という例をたくさん見ているが、資本金と同額の預り金を出資者から集めるという考え方は堅実だ。身の丈にあった成長計画を作ることが企業の独立性を保持する条件だ。

「2」について
新会社にはふつう、社内規定のたぐいが何一つない。就業規則も賃金規定も何もなく会社を起こす。その結果、内部は混乱しやすくなる。戦国武将でも、強い軍団には必ず有能な補給官吏がいる。総務経理や財務など内部管理に明るい人材を創業メンバーに加えることは重要だ。

「3」について
わかりやすい方針だ。賃金の問題で経営者を悩ますのは、「払いすぎていないか」「少なすぎないか」という問題だ。そこで、何らかの賃金統計と照らし合わせ、世間相場とのかい離状況を定期的に点検すると良い。労務士事務所などでは社員の賃金カーブと世間相場カーブとを比較してくれるサービスを行っているところもある。

「4」について
これもこの会社独特のものだ。事業の社会性という問題を考えたとき、この社長は、「立派な社会人を育成することこそ企業最大の使命」と定義した。立派な社会人とは、まず遵法精神を重んじ、次いで道徳的にも人の模範たる人物を育成することにした。多額の現金を扱う店舗部門では、過去において幹部の不正事件などがあったと聞く。Y社長は、そうした事件による経済的損失よりも、結婚式の仲人まで引き受けた期待の店長を失うことの精神的ダメージのほうが大きかったそうだ。この会社では、酒気帯び運転でも解雇になる。また社員はそのことを当然と受け止めている。

「5」について
これは、「4」のテーマと連動している。社員が経済的に自立し、家庭人としても責任を果たしてほしいと願ったものだろう。店長以上の役職者は毎年、資産と負債の状況を会社に報告させることも検討中とのこと。日本的経営の古き良き伝統のひとつ、社内貯金制度もいまだに健在で、社員の蓄財を本気になって支援している。

<明日につづく>