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サブスクリプションに舵を切る

最新の『会社四季報』(2019春号)を見ていて二つのキーワードが
印象的だった。これに注力している企業が増えているのだ。
ひとつが「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション/Ro-
botic Process Automation)である。
ホワイトカラーの生産性を高めるための業務省力化ロボット(コン
ュータソフト)の総称である。

そしてもうひとつのキーワードが「サブスクリプション」(以下「
ブスク」と略す)。サブスクに注力する会社が急増している。
そこで今日はサブスクについて考えたい。

サブスクとはビジネスモデルの一種。利用者がモノやサービスを
うのではなく利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式。
古くは新聞や雑誌の定期購読がそうだし、Amazonのプライムビデオや
Netflixなどの動画会員もサブスクといえる。

書籍『サブスクリプション』の著者ティエン・ツォ、ゲイブ・ワ
ザート両氏は「サブスクリプションに向かない業種はない」と言う
近年、多くのビジネスがサブスク化しているわけだが、その先鞭と
った会社のひとつがAdobeといわれている。

同著に次のようなエピソードが紹介されている。
・・・
2011年11月、Adobe(アドビ)のマークギャレットCFOは数十人のウォ
ール街のアナリストを前にして「できるだけ早く収益を引き下げる
と発表した。アナリストの多くは「引き上げる」の聞き間違いだと
った。だが続く言葉でAdobeの経営方針転換を理解することになる。
Adobeは、収益源だったクリエイティブ・スイートのパッケージ販売を
中止し、サブスクリプション方式に移行すると語ったのだ。
「収益の減少が速いほど、わが社にとっても投資家であるみなさま
とっても良い話なのです。毎月私たちに支払ってくれる人がそれだ
急速に増えていることを意味するからです」とギャレット。

「ダメだ」
そう見限ったアナリストたちは翌日から一斉にAdobeの株を売った。
・・・

株価はしばらく下がったが、その後Adobeの戦略が正しかったことが
証明された。業績は急回復したあと、持続的に成長し最高益を続け
ようになった。そして株価はこの7年で10倍にもなった。

サブスク移行前のAdobeの経営に大きな問題があったわけではない。
莫大な売上げを誇っていた「クリエイティブ・スイート」パッケー
は粗利益率97%で、申し分ない売れ行きだった。それでも経営陣は危
機感を感じていた。客数が増えているのではなく客単価だけで業績
伸ばしていたからだ。

販売収入以外の定期収入が欲しいと考えたAdobe経営陣はもっとも売
上げの大きかったパッケージソフトをサブスク化した。
そんな大胆なAdobeのやり方は、いま、多くのコンピュータソフトメー
カーに影響を与えている。

自動車メーカーも車の販売が頭打ちになり、新興国に賭けている
いずれそれもピークアウトする見通しだ。そうなった時に備えて、
車や中古車の販売一辺倒だったビジネスモデルをサブスク化しよう
実験を開始した。
トヨタ、ポルシェやベンツ、フォードなどが定額で高級車に乗れる
ブスクリプションを始めている。これがうまくいけば、車は所有す
のでなく定額で利用するのが常識になるかもしれない。

ギターメーカーの「Fender」はギター愛好者をターゲットにする戦
略を改めることにした。なぜならギターを始める人の10%しか長続き
しないからだ。90%は一年以内にギターのレッスンに挫折してしまう
現実に注目し、月額制でギターを利用できるサブスクサービスを始
て成功している。

<明日につづく>