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続・「水商売」の概念が変わる話

確実性がない不安定な職業だから水ものの商売「水商売」と言わ
る。水商売の代表は、花柳界やクラブ、スナックなどのビジネスで
最近の求人誌では水商売のことを「乾杯ワーク」などともいうらしい。

そんな水商売がもし、AIなどをつかって明日の来店者数や業績予測
などが正確に出来るようになれば、もう「水商売」ではなくなって
まう。そんなことを思わせる実例が出はじめている。
以下のニュースはネットで見つけたものだが、こんな身近な中小商
がAIですごいことをやってのけているのだ。

三重県伊勢市に有限会社ゑびやという会社がある。内宮の鳥居近
のおはらい町にある「ゑびや大食堂」と「ゑびや商店」を経営する
社である。
正社員数13人、アルバイト・パートさんを含めると40人程度の中小企
業なのだが、この会社の社長がITにめっぽう強く、9割の精度で明日の
客数や売上げを予測するシステムを構築したというのだ。

最初はエクセルで客数や売上げデータを毎日記録するところから
タートした同社。せっかくデータが貯まってきたので、明日の来店
数を予測したり、食材の仕入れやスタッフのシフトなども決められ
いかと考えるようになった。
そのためにはデータが多いほど予測の精度は上がる。スマレジ(タ
レットPOSシステム)のデータや食べログの自店ページへのアクセス数、
Googleアナリティクスのアクセス情報など毎日125項目のデータを集め
るようになった。

ITが苦手なスタッフも多く、データ集めに時間がかかるようになっ
たので、Webサイトから必要なデータを自動的に集め、所定の場所に記
録するソフトを導入し、毎日の作業時間をわずか3分ほどに短縮するの
にも成功。データがみるみる貯まっていった。

その後、AI機能を内蔵したカメラを店内に設置し、顧客の属性や感
情を解析するシステムも導入した。それによって買ってくれたお客
数だけでなく、店の前の通行人の数や、来店者数、性別、年齢、グ
ープの人数なども把握できるようになった。

仕上げはAIを使った来店予測の出番である。
同社のデータの凄みは、自店の業績データだけでなく、天候データ
近隣の宿泊客数、伊勢神宮でのイベント、社内での販促企画など文
通りビッグデータである。
どんなAIシステムを使えば明日以降の来店客数が正確に予測できるの
かを試行錯誤し、そのなかから最適な一本を決めた。

今ではそのシステムをつかって翌日の来客数・注文数を予測。的
率は脅威の9割を誇る。予測が正確にできるので、仕入れやスタッフ配
置も正確に計画できるようになった。その結果、同社は売上4倍、利益
10倍を達成したというのだ。
商品も立地も社員数も何も変えていないのに、社内のシステムを変
ただけでここまで業績が一変する。

ゑびやさんでは、今も1時間ごとの来店者数予測の精度を上げるなど、
システムの完成度を高めている。
次は、「このシステムを困っている他の会社でも使ってみてほしい
とパッケージにして提供するところまでアイデアが広がっていると
う。こうしたシステムが、わずかな利用料で使えるようになったとき、
日本から「水商売」と呼ばれるビジネスは消えてなくなるかもしれ
い。

★参考ブログ
「中小企業のAI活用事例!利益10倍を実現したゑびや大食堂に学ぶデ
ータを活かすという意識」
→ https://mag.branu.jp/archives/2221