その他

続・生産性格差の四大要因

『中小企業・小規模事業者の生産性向上について』(平成29年10月
経済産業省)によれば、生産性の高い中小企業の共通点が三つある
とがわかった。

ひとつめは「IT投資」である。売上の1%以上(または粗利益の3%
以上)のIT投資を継続してきた中小企業は生産性が高い。

ふたつめは「海外展開」である。
経産省のレポートによる「海外展開」とは
1.海外に販売拠点がある
2.海外に生産拠点がある
3.インバウンド対応(外国人旅行者の受け入れ)
の三つを指している。
私は、今話題の越境ECなども「海外展開」に加えてよいと思っている。

ここまでを昨日お話ししたが、今日はその続き。

三つ目のポイントは「事業承継」である。

1995年当時、経営者の年齢別人数で一番多かったのが47歳。しかし20
年経過した2015年では、そのピークが66歳になった。なんと19歳分も
ピークが移動している。
単純な社長の平均年齢でみれば、1995年は55歳だったものが2015年に
は59歳超と、4歳以上もあがった。明らかに社長の高齢化が進んでい
るが、社長の年齢に反比例するかのように生産性が下がっている。
つまり社長の高齢化は生産性の阻害要因と考えられるわけだ。

社長の年齢別の売上高をみると、社長が30歳~40歳の会社が一番売
上を伸ばしているのに対し、社長が70歳以上の会社はその3分の1から
4分の1の売上伸長しかない。社長の若さは会社に勢いをつくることが
売上データからも確認できるわけだ。

以上のことから、生産性を上げたければ
1.IT投資する
2.海外展開する
3.事情承継する
という三つの結論にいたる。

ちまたの本やセミナーでは「戦術」としての生産性向上を論じて
る。いわく、「成果の低い業務をなくす(減らす)」「部下に任せる」
「機械化する」「パートアルバイト化する」「外国人材を雇用する
「コミュニケーションを良くする」などである。
いずれも大切なことだが、社長がやる「戦略」の生産性向上は上記
三つなのである。

さてここまで書いてきて、「生産性格差の四大要因」というメル
ガタイトルなのに三要因しかないではないか、という疑問をもたれ
方もおみえだろう。

そうなのだ。実は隠された四つ目がある。
中小企業庁のホームページに「平成29年度(2017年度)の中小企業の
動向」と題したレポートがある。そのなかの「経営体制と企業行動
の関係」という箇所に次のようなくだりがある。

・・・
経営計画の策定と企業行動

経営計画の策定状況と投資行動や経営の取組の関係について見ていく。
ここでの経営計画とは、企業の経営理念やビジョンをもとにどのよ
な行動を行っていくかを示した計画を指す。通常、企業が作成する
営計画には、年度ごとの単年度経営計画や、一般的に2年以上の複数年
度の計画である中期経営計画がある。
第1-3-24図は、経営計画(中期計画)の策定の有無と投資行動や経営
の取組を分析したものである。中期計画を策定しているほうが、投
行動や経営の取組について、いずれも取り組んでいる比率が高いこ
が見て取れる。特に人材育成や業務効率化の取組について、経営計
を策定している企業と策定していない企業で差が大きい。このこと
り、経営計画を策定している企業のほうが、計画的に投資活動や経
の取組を行っていると示唆される。
・・・

手短にいえば、
1.IT投資する
2.海外展開する
3.事業承継する
などの生産性向上のための投資は、経営計画をつくって中長期の視
があって初めてできるものなのだ。
ということで、武沢の結論。
戦略的な生産性向上策は次の四つになる。

1.中長期経営計画をつくり生産性向上目標を明確にする
2.計画的にIT投資する
3.計画的に海外展開をすすめていく
4.計画的に事業承継し、経営陣の若返りを計る

以上。

<参考サイト>

★『中小企業・小規模事業者の生産性向上について』
(平成29年10月経済産業省) → http://urx.blue/BWzL

★『平成29年度(2017年度)の中小企業の動向』(中小企業庁)
→ http://u0u0.net/Rrgv