未分類

始めよければすべて良し

昨年末、ひとりで都内の寿司屋に入った。回転レーンこそないもの
の、人気店らしく店内はほぼ満席で活気がある。
カウンターが1席だけ空いていたのでそこに案内された。
「税込1万円でおまかせ握り。生ビール2~3杯込みで」と板前にオーダ
ーすると、「へいよ!」と威勢の良い返事。すぐに生ビールとお通し
の鮭ルイベが出てきた。

一息つくと、周囲を観察する余裕ができた。隣の老夫婦のこんな会
話が耳に入ってきた。

男:どうする、今年もあと半月だよ
女:終わりよければすべて良しっていうから、残った日を大切に過ご
  さないとね
男:ん、それは逆なんじゃないか?
女:逆って、なにが
男:終わりよければすべて良しじゃなくて、昔から言われてるのは、
  始めよければすべて良しだと思うぞ
女:ううん、そんなことない。終わりよければすべて良しが実家の母
  の口ぐせだったもの
男:それは母さんの口ぐせで、ことわざは始めよければすべて良し、
  だぞ
女:そんなことないって
男:いや、あるって

「このわたが入ってますが、お出ししましょうか」と板さん。
「いいねぇ、旬の珍味は好物です」
「そのあと、白子ポン酢もご用意します」
「ありがとう」

隣の夫婦は互いに主張を譲らない。いっそ、仲裁に入ろうかと思った。
だが、そうした他愛ない会話が酒の肴になっているかもしれず、私は
無言でビールを味わうことにした。

「終わりよければすべて良し」と主張する女性が正しい。男性が言
う「始めよければすべて良し」は間違っている。
ただ、「始めよければ終わり良し」という格言はある。ならば、「終
わりよければすべて良し」なので、「始めよければすべて良し」と言
えなくもない。
何事においても、最初と最後が肝心だし、もちろん中盤も大切だ。
「なんだ、全部大事じゃないか」となるが、事実そうなのだ。

ただ、例外がある。競技の場合、終わりと始めとどちらが大事かと
いうと断然「始め」なのである。
プロ野球のイニング別スコアと勝敗に関する膨大なデータから導き出
されたこんな結論がある。

・先攻チームが一回の表を0点で終わると、勝利が4割にしかならない

★「1回表に1得点先制だと勝率が5割を下回る?」 より
 ⇒ https://note.mu/aozora_data/n/n5052fce189a7

つまり、先攻チームにとっては「始めがとても肝心」なのである。
一回の表に1得点を取った場合は有利になるかというと、そうでもない。
勝率は53.69%に上がるだけ。つまり、1点とってようやく互角に毛がは
えた程度。
2点取れば、勝率は64%、3点なら75%と明らかに有利になるが、0点は劣
勢なのである。
敵がある競技の場合、始めが肝心と言えるわけだ。
「始めよければすべて良し」という男性の主張は、競技スポーツの場
合は正しいのである。

では経営は競技か?
そう、自分という敵、同業他社という敵がいる競技スポーツととらえ
るべきで、この1月は一回の表なのである。
先取点にこだわろう。ボチボチやろうなどと思わないことが肝心なの
である。