★テーマ別★

まず一極集中、突破すべし

Rewrite:2014年3月23日(日)

ベンチャー企業の経営者にお会いすることがある。彼らの悩みの多くは資金不足に関するものだ。アイデアも技術も人も何とかなるが、資金だけは思うようにいかないという。だが、そうなってしまうのは、スタートアップのときの作戦ミスであることが多い。

あるときお会いした飲食ベンチャーの経営者もそんなひとりだ。
資本金2,000万円(株主4名)で会社を立ち上げ、「実験店」として一号店を開設。独自のメニューと味付け、それに個性的な演出が好評で、おおむね満足できるスタートを切った。

その後、マスコミの取材を受けたことがきっかけとなり、2号店の出店要請が舞い込む。しかも有利な条件なので、即決した。さらに同時並行で、別の場所にオフィスも兼ねたセントラルキッチンにも着工をした。当然、資金ショートを起こす。あわてて金策に走り回ったが後手を踏んだ資金調達はうまくいかない。
2号店の権利売却までをも検討せざるを得なくなった。成功ムードが一転して窮地に。こんな段階で資金調達のご相談に来られても遅い。
知人から出資内諾を得ていたのが土壇場でとん挫するというアクシデントがあったとは言え、その知人だけを批判することはできない。

ベンチャーの魅力は、冒険精神と機敏な行動力にある。この経営者もそうした面では充分に魅力的だ。しかし、スピリッツと夢が先行し、現実の資金面でつまずいてしまった。
その理由はいろいろ考えられるが、成功を急ぎすぎ点が最大の問題だろう。最初の第一号店が事業全体のカギを握るはずだ。信長の桶狭間、つまり、この戦に勝たずして明日はない中で、資金もエネルギーも一点に集中せねばならない。にもかかわらず分散させてしまった。

誤りは資金面だけではない。人材面の活用においても然りだ。4名の出資者兼役員が役割分担をし、「商品開発」「店舗開発」「総務経理」「オペレーション担当」という具合に各々の機能を分け、それに専念させた。全員が一号店の成功のために一局集中すべきときに、次のステージのための準備を各自が始めていたわけだ。

まず一極集中しそこを突破する。そこで初めて全面展開できる標準形が見つかる可能性がでてくるのだ。

この飲食ベンチャーの経営者からサクセスストーリーが聞ける日を願うばかりである。