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気宇壮大な弱者の戦略

ランチェスター経営戦略では、市場シェア1位の会社を「強者」と呼び、それ以外の会社を「弱者」と呼ぶ。
「強者」か「弱者」かによって戦略を変える必要があると教える。
九州の竹田陽一先生が説く強者と弱者の戦略は次のように明快だ。

以下、ランチェスター経営株式会社のホームページより。
★ランチェスター経営 HP
→ http://www.lanchest.com/2history21.html

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<強者の戦略>

第1条. 強者は総合で1位になることを目ざす
第2条. 強者は2位を攻撃目標にし2位との差が10対6以上開くようにする
第3条. 強者は市場規模が大きな商品に力を入れる
第4条. 強者は商品の幅を広げ弱点を作らないようにする
第5条. 強者は商品開発に力を入れる
第6条. 強者は人口が多い大都市に力を入れる
第7条. 強者は営業地域を広くし盲点を作らないようにする
第8条. 市場規模が大きな業界と客層に力を入れる
第9条. 強者は卸会社を使った間接販売を重視する
第10条. 強者はマス広告を使用する
第12条. 強者は工場や事務所は自社所有にする
第13条. 強者は弱者が新製品を出したり今迄にない営業方法を実行し
たら直ちに同じやり方をする
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(竹田先生、11条は何でしょう?)

この「強者の戦略」が実行できるのは1000社中5社位しかなく、残りの995社は次の「弱者の戦略」で経営しなければならないという。

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【弱者の経営戦略17カ条】

第1条. 弱者の社長は1位作りに強い願望と熱意を持て
第2条. 自社よりも大きな会社は攻撃目標にするな
第3条. 弱者は強い会社と同じ方法で経営せず違ったやり方をせよ
第4条. 1位作りの目標は対象を細分化して発見せよ
第5条. 弱者は市場規模が小さな商品で1位になることを目ざせ
第6条. 弱者は商品の幅は狭くして経営力の分散を防げ
第7条. 弱者は市場規模が小さな地域で1位になることを目ざせ
第8条. 弱者は営業地域の最大範囲を狭くせよ
第9条. 弱者は市場規模が小さな業界や客層で1位になる事を目ざせ
第10条. 目標には1位になれるだけの戦術力を投入せよ
第11条. 弱者は間接販売を避けて最終利用者へ直接販売することを重視せよ
第12条. 弱者はお客に感謝の心を伝えお客の維持力を高めよ
第13条. 弱者は人の力がより有効に発揮できる組織システムを作れ
第14条. 弱者は資金の固定化を防ぎ経理の仕事は簡単にせよ
第15条. 弱者の社長は朝型を中心に3200時間以上仕事をせよ
第16条. 弱者の社長は経営戦略の研究に力を入れ上位3%に入る実力を身につけよ
第17条. 弱者は調子に乗るな。小さな成功で生活内容を変えるな
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良かれと思って大企業や同業他社の後追いばかりしていると、知らないうちに「強者の戦略」を取ってしまうこともある。
弱者の戦略は言いかえるならば、地上戦、地域戦、密着戦+泥臭さ+ハードワークで成立すると言っても過言ではない。

先日お目にかかった開業医向け事業承継コンサルタントの N 氏は、「日本全国、出張無料相談を承ります」とアピールしている。
しかも成約後のコンサルティング料も完全成功報酬型なので、後払い。
もしお客さんがコンサルティング内容に不満があって途中解約されたり、事業承継がうまくいかなかった場合は完全無料のボランティアになる。
それでも充分に事業が成立しているというのがすごい。
N 氏の場合は、ご自身が以前に開業医をしておられ、大手に事業売却して資金が入った。
豊富な資金力をバックに「強者の戦略」を意識的に行っておられるのである。
こういう場合は開業直後なのに「強者の戦略」が有効になる。

中小企業や個人事業主の多くは「弱者の戦略」を取るべきである
だが、気分まで弱者候のチキンハートになってしまうのは良くない
あくまで事業家として気宇壮大に考えるべきだろう。

※【気宇壮大】(きうそうだい)
心意気、度量や発想などが人並みはずれて大きいさま。

ソフトバンクの孫正義社長は「僕はニッチの産業を選んだことは一度もない」と言う。
さらにこう続く。

「仮に僕が選んだ産業の規模が今は小さくて、すき間のように小さな市場規模だったとしても、5年後10年後30年後にそこがメインになると思えるものを選んできた。今はすき間のように小さな市場が、大きな流れになって、やがて本流になり、一番大きなマスマーケットになっていく。そういう可能性のあるところに僕は投資してきた」

地方都市の公団団地の商店街でかき氷専門店を開く、というアイデアをもった起業家がセミナーに参加されたことがある。
ご本人はニッチ市場でライバル不在と胸を張っておられたが、ニッチだから正解と誤解していないだろうか。
ニッチとは英語で「すき間」と訳される
今のニッチ市場が10年後もニッチのままで、20年後は先細って消滅していた、なんてことは笑い話である。

  1. 今はニッチ、10年後20年後もニッチ。なので個人商店として小さく楽しくやる。
  2. 今はニッチ、10年後20年後もニッチ。なので、店数を増やして全国規模の事業にする。
  3. 今はニッチ、10年後20年後は大きな市場規模になる。その頃には大きなマーケットでトップに立つ。

どういう考え方でやるかを決めておく必要があるだろう。

再び孫正義社長。

「将来メインになるところで戦うのが怖くて、勝てる自信がなく、すき間、すき間と逃げていく。それはしょせん負け犬、子犬の戦い方。それではいつまでたっても将来の大きな成功は望めない」

若い経営者にそのような檄を飛ばしている。

★出典:https://logmi.jp/29001