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体系的な社員教育に取り組もう

Rewrite:2014年3月26日(水)

シリコンバレー最初のベンチャー企業「ヒューレットパッカード社」は、日本企業以上に日本的な経営でも有名だ。経営者の育成と選抜における東の横綱がGE(ゼネラルエレクトリック)とすれば、西の横綱がHP(ヒューレットパッカード)とさえ言われている。
HPでは、人に関する哲学と考え方がわかりやすく、かつ一貫している。日経BP社から出版されている『HPウェイ』にある一節をご紹介する。

「組織が効率を最大限に高め、成功を収めるには、様々な条件を満たさなければならない。その一つは、各職務に最も能力のある人材を配置することである。そして、進歩の早いハイテク業界では継続的に研修を実施していく必要がある。組織の全員が、各自の仕事を最も適切に行う方法を、たえず模索していかねばならない。」

戦後において、日本が高度成長をなしとげた要因の一つも、「継続的な研修の実施」であったことは疑う余地もない。そして中小企業が、その機敏な経営規模を活かし、大企業に互していくためにも「継続的な研修の実施」を欠かすことはできない。

制度と呼べるほどの研修システムをもつ中小企業は意外と少ない。社内に研修制度を根づかせるために何が必要か考えてみた。

1.まずは、主だった研修情報を集めること。
我が業界、または、我が社が必要としている研修テーマをネットで検索する。たとえば、「営業研修 不動産」と入れれば不動産営業に関する研修情報が手に入る。その中の何社かにメールで今後も研修案内を送ってくれるように頼んでおけば、居ながらにして研修情報が流れ込む。

2.仮の「教育体系図」を作る。
縦軸に「役員」「管理職」「中堅社員」「一般社員」「新入社員」などの職制を、横軸には「営業」「製造」「管理」などの部門名を記入した表を作り、該当するところに研修名を仮記入していく。

3.実際に社員を派遣する。
最初の研修参加目的は、研修そのものの評価にある。従って、できれば同一人物が一通りの研修を受けるほうが望ましい。そして、評価の高い研修は、今後の研修制度の定番メニューにして社員を派遣する。

4.研修の年間予算を決める。
交通費や宿泊費を含めた研修費用は、最低でも社員数×10万円を維持する。余力があればそれ以上を投資したい。
その金額を、選抜された一部の人材に集中投資する。

5.優先順位は経営者から
役職でいえば、上から(経営者や管理者)順に教育投資する。ドラッカーが言っているように、「人材育成の要諦は、一流の人材と一緒に仕事をさせること」なのである。経営者や管理者が一流であれば、部下も一流になりやすい。

6.以上のことを継続し、体系的な教育研修制度を作る。そのために必要ならば、研修専任職を設ける。

中小企業として一定以上の規模を持ちながらも、人事部が弱い会社が多い。採用や労務の事務方作業に追われ、企業目的や経営戦略をサポートする人材育成ができる人事部が少ないのではないか。それは、人事や研修に対するトップ自らの認識の問題でもある。

また、多くの企業では研修予算が決められていない。また研修情報の収集にしても、たまたま送られてきた研修案内を見て興味があれば参加するという程度にとどまっている。そうした、偶然と運による研修システムでは、やがて研修が途絶える。

もう一度この言葉を味わってみよう。
「組織が効率を最大限に高め、成功を収めるには、様々な条件を満たさなければならない。その一つは、各職務に最も能力のある人材を配置することである。そして、進歩の早いハイテク業界では継続的に研修を実施していく必要がある。組織の全員が、各自の仕事を最も適切に行う方法を、たえず模索していかねばならない。」