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こんな値付けの方法もある

昨日は今日の小売店の常識をつくりあげた三井高利の話をした。
出前、行商が常識だったところに店頭販売、正札販売、現金販売という新常識をもちこんだ高利のイノベーションが成功した。新しいもの好きの江戸の庶民が高利の越後屋に殺到し、一日千両(8,000万円)売る店になった。

あれから350年。さすがに平成も30年になると、高利がつくった常識の正味期限が切れかかっているよう。
「一物一価」の現金正札販売でよいのか?
民泊にしろ、メルカリにしろ、売り手と買い手が自由に値段を決めあっている。しかも売り手・買い手ともに相手を評価する。そんな自由で対等な商取引が生まれている。

美容師の金井亮氏がこんなツイートをしたのは昨年の9月26日だった。
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【フォロワー数で値段が変わる美容室】をオープンします。
・フォロワー5000人以上は無料
・フォロワー10000人以上は1万円差しあげます。
・それ以上はフォロワー数=お支払いする値段!
その代わりツイートしてね!
問い合わせはDMまでお願いします!
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970件の【いいね】と1,093件のリツイートが生まれた。

翌10月にお店をオープン。カット、カラー、パーマなどは各1万円とかなり高めの価格設定だが、ツイッターのフォロワーが多ければ無料、もしくはお金がもらえるとあって主にオピニオンリーダー層から反響があった。

昨日の日経 MJ によれば、最初の月(10月)は赤字だったが、12月の売上は1,000万円を超えた。アシスタントに100万円の給料を払うことができたという。

タレントやカリスマブロガー、人気ユーチューバーが次々に来店する。彼らは無料で、おこづかい付きでカットしてもらえるからだ。
それを知ったネットの一般客は、「○○さんの話を聞かせてください」とやってくる。そちらは正規料金をもらう。

同じカットなのに、片や1万円を頂戴し、片や、3万円を進呈する、といったビジネスモデルだ。しかもそれはツイッターのフォロワー数(ネット影響力)を基準にして決めるというのだからユニークだ。
「一物一価」を導入した三井高利ならこのビジネスモデルをどう評価するのだろうか。

どうやら他にも「金井コイン」を発行するなどユニークな企画を次々に打ち出している金井さん。
ツイッターには「売名行為じゃないか」といったメッセージも投稿されているが、おそらく三井高利だって越後屋を開業したころは周囲から奇異な目でみられたに違いない。

話題づくりが大切なのではない。ビジネスとして成立するかどうかは12月のような収益がこれからもコンスタントに継続できるかどうかである。
私たちはこうした新手のビジネスモデルに対して敏感になり、それを自社に置きかえて連想するトレーニングを欠かさないようにしたい

★ブログ「フォロワー数で値段が変わる美容室」
→ http://blog.livedoor.jp/kanai_ryo/