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社長の健康法に「経営計画」

10「社長、大変です!明日落ちる銀行引き落としの資金が足りません」と経理部長。
社長は驚いた。「それおかしいよ。昨日の段階であなたが今月は大丈夫そうです、って言ってたよね」
「そんな事、私はひとことも言ってません」
「言ったって」
「言ってません」
「毎月こんな押し問答してるね、あなたとは。で、幾ら足りないの?」
「300万ほどです」
「そんな無茶な」
「私の責任ではありません。どうされますか、社長」
「先月は僕の車を売ったから、今月は家を売るしかないよ」
「では売却の手続きをお願いします」

「・・・」

かつてはそんな夢をよく見たという T 社長。実際、その当時は資金難が続き、起きている間はずっとお金の不安が頭を占めた。ついには夢の中にまで生々しく資金不足の場面がおそってくるようになったそうだ。

「それは辛かったでしょ」という私にむかって、「武沢先生は辛くて眠れなかった経験はありますか?」と T 社長が聞く。
幸い私は布団に入るとたいていすぐに眠ってしまうが、寝る直前まで仕事をしていた時などは脳がまだ興奮状態にあるのか寝付かれない時がある。そんな程度だ。

T 社長の資金難は解消され、いまはぐっすり眠られるようになったそうだ。
そもそも社長業というのは夜眠れない経験を何度もするものである
それがいやだ、仕事とプライベートをきっちり分けたい、というのは都合がよい話。夜眠れないのはまだ可愛らしい方で、血の小便が出たり体調に異変を来したりするのが社長である。
だから免疫力の高さや胃腸の丈夫さ、基礎体力などが常人より優れた人が経営をやるものである。

昨日お会いした H 社長は最近顔の色つやがすこぶるよい。それもそのはず、この半年間で自己資金を何倍にも増やしたのだ。新事業が順調であることがひとつの原因だが、それよりも大きな要因は、銀行対策を強化したこと。各金融機関と膝つき合わせて交渉し、既存の借り入れを見直しながら、新規での借り入れも行った。
その結果、返済金利が下がり毎月の金利負担が何万円か安くなった。
年間では数十万円から100万円ほどのキャッシュアウトが防げたのである。さらに、低利の運転資金を借りた。その結果、常時1000万円ほどだった自己資金が3000万円に増えた。
たったそれだけのことなのに、経営者としての選択肢がグーンと増えて心の余裕が生まれるようになって調子がよいという。

経営の心配は資金だけとは限らない。人の問題、製品の問題、取引先との問題などたくさんの懸念材料がある。家族や友人、勉強会や趣味の仲間など、プライベートの問題もある。
できれば何も問題がない状態をめざしたいが、絶えず経営者には問題がつきまとう。何があっても動じない自分をつくる必要があるが、それには心身を鍛えるだけでなく、「経営計画書」を最新に保つことが大切だというのが私の持論である。