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メモと記憶に関するスタイル



メモと記憶に関しては人それぞに自分のスタイルがあるようだ。

ベートーベンは膨大な数の楽譜メモの断片を残した。いつ、どこにいてもメモに楽譜を書けるようにしていた。だが、ピアノにむかって作曲するときにはそれらのメモを見ることはなかったという。
「なぜなの?」と尋ねられたベートーベンは次のように答えている。
「一度書かないと忘れるが、一度書けば忘れない。だからもう見る必要はないのさ」

それがベートーベンのスタイルだ。

GMの中興の祖、アルフレッド・スローンはメモをとらなかった。
会議中、部下が興味深い発言をしてもメモをとらない。そのかわりに反すうした。スローンは自分の言葉でもう一度同じことを語って、その場で咀嚼(そしゃく)してしまう人だったのだ。

それがスローンのスタイルだ。

友人の A 氏は写真を撮らない。一緒に旅行しても、まったく写真を撮らないし、自らが被写体になるのも拒む。そのかわり、感動的な景色やオシャレなものに出逢うと、その場を何分も動かない。時にはスケッチをとることもあるが、写真は決してとらない。
「どうして?」と尋ねると、写真を撮ると忘れてしまうからだという。

それが A 氏のスタイルだ。

たしかに「写真撮影減殺効果」というものがあり、写真をパチパチ撮って貯め込んでおくと、かえって記憶に残らなくなるということが科学的に検証されているようだ。

★写真撮影減殺効果
→ http://karapaia.com/archives/52148415.html

写真を撮ってはいけない、と言っているのではない。撮ったから安心、と思ってその後見ないでいると、写真を撮らなかったときよりも早く忘れてしまう、ということだ。

なるほど、よいことを聞いた。
嫌な奴に出会ったら、さっさと彼を撮影して早く忘れてしまおう。
嫌なできごとがあったら、さっさと何かに記録して早く忘れてしまおう。

それもひとつの科学的なスタイルだ。

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