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労務倒産の時代

「労務倒産が増えている」と友人の社労士。
新宿にある彼のオフィスには、連日たくさんの経営者や人事の責任者が労務問題の相談に訪れるという。
一番多いのが残業時間を減らすことや、有給休暇の取得促進、就業規則の見直しや改定などのいわゆる「働き方改革」の相談。その次に多いのが助成金や補助金関連の相談だという。そして、最近急増しているのが「求人対策」。以前はほとんどなかったこの相談が急激に増えているというのだ。

「せっかく息子(後継者)が会社の跡取りを引き受けてくれたのに、肝心の社員が高齢化してしまい、若い人材が採用できない。人手が確保できないという理由で、後継予定の息子が他社に就職してしまい、会社の存続をあきらめて閉鎖することになった会社もある」と彼。
これも「労務倒産」である。

人材が確保できないということは、事業の発展はおろか存続そのものが危ぶまれる。職場としての会社の魅力作りを怠ってきた会社がいまピンチに見舞われているのだ。

職人の高齢化が急速に進んでいる業界でも労務倒産は増えかねない
そうした業界では、あと何年か後に団塊の世代が一気に退職していく。
一部の製造業、たとえば鋳造・鍛造工場の多くは古参社員で現場がまわっている。旋盤・フライス版などを揃えた加工工場でもベテラン工員がたくさん働いている。
土木・建設・内装などの業界にもベテラン職人が多数いる。彼らが高齢化し、続々と引退していったとき、現場を回す人たちがいなくなる。
それが「労務倒産」だ。

有資格者によって運営されている業界でも人材の確保に躍起だ。
たとえばある総合病院では、看護師さんを紹介して見事採用となった場合には紹介者に30万円の御礼を払うことを社員や関係者に約束している。
宅建や不動産鑑定などの資格を持つ人を採用できたら50万円払うと宣言している不動産会社もある。

「レアメタル」(稀少金属)という言葉があるが、若くて優秀な人材は「レアヒューマン」(稀少人材)化している。
人口減少社会の突入によって、今後、好況・不況に関係なく人手不足が続く可能性がある。AI やロボットの進化によっていずれは人手不足は解消されるという専門家もいるが、いずれにしても会社の採用力を高める努力は欠かせない。
人材対策はマーケティング対策同様、トップ自身が率先して取り組まねばならない大切な課題である。