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師走の週末余話

先週木曜日の夜、
「武沢さん、会いたいのだが、今週末の予定は?」と東京にいる友人から Facebook メッセージがきた。

「悪いけど木曜日から土曜日までは都内にいるが、予定がすべてつまっていて立錐の余地もなし。日曜日の朝に名古屋に帰り、午後にホットヨガの予定を入れてある。今回は無理っぽいね」と返事した。

すると、「僕が名古屋に行くから日曜日の夕方に時間を作ってくれ」という。彼がここまで粘るのは珍しい。よほどの急用があるのだろう。
「夕方なら大丈夫かも。ただ今回はあまり遅くまで飲みたい気分じゃないよ」と返事した。

15分後、彼からふたたびメッセージが届いた。

「コンサートチケットを2枚手に入れた。17時半開演で2時間で終わるから安心してほしい。16時に名古屋駅の金の時計台下で合流しよう」とあった。
何のコンサートかは書いてないが、彼の好みからしてクラシックかロックンロールのどちらかだろう。どちらも嫌いではないが、自分では行かない類いのものなので「了解」とだけ返しておいた。

日曜日、約束の16時きっかりに彼は時計台下に現れた。

「おつかれのところすみません」と殊勝な一面をみせる。剛胆な経営者なのだが、こういう繊細なところが彼らしい。
「いえいえ、平気ですよ。それより今から何のコンサートですか?」と気になっていることを聞いてみた。
すると、「矢沢です。武沢さんと矢沢を聞きに行くというのがずっとWish-List に入ったままだった。こういうチャンスを狙っていたともいえる。今日はワガママを聞いてもらった」という。

「矢沢って、もちろん、あの矢沢だよね?」と私。
「そう、あの矢沢。ほかにどんな矢沢がいます」と彼。

武沢:いろいろいるけど、彼ほど有名ではない
友人:そうでしょ、一番有名な矢沢です。永吉ですよ
武:しかし、それにしてもよくチケットが取れたね?
友:実は昨日と今日の二日間の名古屋コンサートでは、1万人入るガイシホールを使うが、チケットは二日とも完全ソールドアウト。さすが矢沢。彼ももう67ですよ。
武:67歳?元気だね。で、チケットはヤフオク?
友:チケットキャンプで手に入れた。プレミアム価格だったけど、こんな機会はまずないので。

定価10,500円(税込)の S 席が幾らで売られていたかは知らないが、とてもありがたかった。席は2階席で少し遠かったが、視界をさえぎるものがなく見やすかった。

席について彼は「すこし気合いを入れすぎました。まだ1時間ありますよ。さすがにガラガラだ」と笑う。コーラとポテトチップスを売店で買って、彼の矢沢談義を聞くことにした。

「実は僕も矢沢のコンサートは初めてなんです」と彼。てっきり熱烈な永ちゃんファンだと思っていた。たしかに手荷物にも矢沢タオルがない。
「じゃあ、どうしてまた・・・」と聞くと、こんな話をしてくれた。

・・・
僕(友人)は外国で旅行の会社を立ち上げていましたから、アーチストやスポーツ選手との接点は多い。矢沢が若くて絶頂にあったころ、ラスベガスやロスでも何度か見かけています。一度なんかは和食レストランのテーブル席で食事していたら、カウンターで矢沢が付き人らしき人とビールを飲んでいた。私は引率者の立場でしたから、周囲のお客さんに、「矢沢ですよ、サインもらったらどうですか?」とけしかけた。数人のお客さんはサインをもらったり握手もしてもらって、大喜びしていた。行列ができたので、矢沢は逃げるようにどこかへ行ってしまった。私はまったく矢沢に興味がなかったので、ただ眺めているだけでした。ところが何年かしてマスコミが大騒ぎする事件が起きました。武沢さんもご存知ですよね?いわゆる矢沢伝説のハイライトともいえる事件のことを?
・・・
矢沢伝説も知らなければ、事件も知らない私は「さあ?」と首をひね
るしかなかった。

その後、彼は矢沢伝説をかいつまんで話してくれた。

<あすにつづく>