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規律をもたらすもの

時々立ち寄るCDショップがいくつかあります。今どんな音楽が人気なのかを店内でチェックし、視聴したりして好みのものがあれば買うつもりで店内に足を踏み入れるのです。ところが、ある店だけでは絶対に買いません。と言うよりは、そのお店の側で「買うな、帰れ」と言っているようなのです。

ひと目でそれとわかる“万引き監視係員”が入り口近くに立っているのです。そして客の行動や目線などを文字どおり“監視”しています。とても居心地の悪い雰囲気です。きっと、そのお店は万引き被害が多いのでしょう。だから、係員を配置してお客を見張らせているのです。係員の人は、不正を見つけるのが仕事です。ですから、「絶対に見逃さないぞ」という決意と使命感が顔つきからからにじみ出ています。

このように、管理する側とされる側という構図があると、店側とお客側に良いムードは生まれません。これは企業という組織の中でも同じはずです。
では、管理してはいけないのか、というとそうではありません。管理は大切なのです。ただし、管理する対象が「人」であってはならないのです。管理するのはシステムやルールなのです。

創業時にはあれほど楽しさと刺激に富んでいた魅力あふれる会社が、ある程度成長すると、急に官僚的なつまらない会社になることがあります。それは、人を管理するためのシステムやルールを増やすからです。どんどん人の拘束を強めていきますから先ほどのCDショップのように息苦しくなるのです。人の拘束を強めてはいけません。自由は奪ってはならないのです。

「自由さを強調してばかりいると野放図になるでしょう。」という声が聞こえてきそうですが、その通りです。今日の言葉にもあるように、「自由」と裏腹に「責任」があるのだということを教え、それをシステムにすれば良いのです。そして、人が人を管理するのでなく、自分で自分を管理するように仕向けるのです。これを、大人の組織とか規律ある組織と言います。

例をあげて考えましょう。

いつもE君は遅刻してきます。山田社長は悩んでいました。正社員13人のこの山田工務店(仮名)でE君は、曲がりなりにもナンバー3の常務という立場です。

9年前の創業間もない頃から入社してくれて、営業部門は彼なしでは立ちゆかないほどの人材に成長してくれました。当然、主力顧客の大半を彼ひとりに任せられるほど、顧客からも高く評価されているのです。そして、おととしの秋、山田社長は決断しました。E君に取締役就任を依頼、役職を「常務」にしたいと告げました。E君はうれしそうに、快くそれを引き受けました。

実は、それをきっかけにしてE君の自覚が高まり、遅刻癖が直るのでは、と山田社長は期待していたのです。

ところが、その期待はあっさりと裏切られました。全然遅刻は直らないのです。むしろ、遅刻してもやるべき仕事をきっちりとやっていれば昇格できるのだ、というお墨付きを社員全員に与えてしまったようです。

「困った。どうしよう、武沢さん。」

山田社長は、昨年の暮れに相談に来られました。
「どうなさりたいのですか?」と尋ねると、「板挟みです」とおっしゃいました。

・E君を罰則処分してでも、彼や他の社員にルールを守ることを教える
・個人的にE君の遅刻癖を矯正してやり、何とか罰則は避けたい
・E君と話し合い、E君だけの特例ルールを作ってあげる

「どれが良いでしょうか」というお尋ねなのです。

私は申し上げました。「答えは社長の山田さんが持っていますよ。むしろ、山田さんの弱さというか、人間らしさが今回の板挟みでよく表れていますね。」

「え? 武沢さん、意味がよくわかりませんが・・・」

<来週につづく>