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マージナルマンというものについて

マージナル マン(marginal man)とは、文化の異なる複数の集団に属し、そのいずれにも完全には所属することはせず、それぞれの集団の境界にいる人のことをいう。
『T型マージナルマン』(萱場 修著、1987)という本が当時話題になった。文字通り「 T 型」のマージナルマンが活躍する時代と著者は説いた。深く掘りさげた専門性がありながら、その周辺分野は広く浅く掘る。その形が T の字になるから T 型マージナルだ。

『がんばれ社長!今日のポイント』もマージナルなメルマガだと思う。経営、社長業という分野を中心にしながらもこのような記事も書くわけで、特定のジャンルに偏っていない。私自身が偏るのを好まないからだ。

「武沢さんの専門は何?」と私より10歳ぐらい年長のコンサルタントに尋ねられた。以前なら「社長メルマガで読者が25,000人います」とか、「ブロガーでメシを食っています」と言うだけで相手は、「ほお~」と畏敬の念で見てくれた。
だが、いまどきそんなことに斬新さはないらしく更に聞かれた。
「武沢さんがメルマガをやっていることは知っている。僕も読んでいます。で、武沢さんの専門は何なの?」とまた聞いてくる。

「それ以外はあまりないんだけど」と思いながら、このように答えた。
「経営計画の個別指導数は日本一だと思います。40歳から22年間で経営計画書づくりを直接サポートしてきた会社の数は1,000社を超えています」

そう答えたところ、
「なるほど!経営計画の専門家なのですね」とベテランコンサルタントは納得しておられた。
「だったらそういう風に名刺に刷れば良いのに」と助言までしてくれた。

だが、私は自分に「〇〇の専門家」というレッテルを貼りたくない。
貼れば楽になるかもしれないが、貼った瞬間に自己規定してしまう。
今後もそうあらねばならないと進路を特定してしまう。
自由気ままにやりたいというつもりはない。日本の社長の経営力が高まるよう毎日応援する、という基本コンセプトがあるので、そこは変えるつもりはない。だが、やるべき仕事は日替わりでも良いのではないかと思う。時には作家として執筆に没頭し、時にはコンサルタントとして社長の相談にのり、時にはセミナー講師として全国を飛び、時にはツアーガイドとして名所旧跡を巡り、時には編集長として雑誌の編集にあたり、時にはコピーライターとしてクライアントのマーケティングを支援し、時にはグルメレポーターとして感動の逸品を紹介したい。そうした T 型のマージナルマンでありたい。

ちょうど読書でいう「乱読」のようなもので、私は乱読も大好きだ。
・乱読(片っ端から気になった本を読むこと、無秩序、無節操に見えるほどに脈絡なく読むこと)

乱読のように仕事をすることを乱業と呼んでみよう。
・乱業(上記の「本を読む」というくだりを「仕事をする」に置きかえる)

外山 滋比古(とやま しげひこ)氏といえば『思考の整理学』の著者として有名で、1923年生まれの93歳。専門は英文学で今なお ”知の巨人” にふさわしい旺盛な執筆力で、学ぶこと、考えること、生きることに関する新たな示唆を与えてくれる驚嘆すべきナインティーズ(90代)である。

そんな氏による『乱読のセレンディピティ』は面白かった。乱読する勇気と確信を与えてくれる。それだけではない。読書という行為に対する新しい視点を提供してくれる。

明日はその本を紹介しながら乱読の魅力を考える。そこからあらためて乱業(マージナルマン)というテーマも考えてみたいと思う。

<あすにつづく>