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株価に効くクスリ

株は長期で保有するもの、という昔ながらの投資スタンスに加え、最近はコンピュータをつかったデイトレード(一日単位で売り買いする)や、スキャルピング(円単位のわずかな値幅をとって一日何度も売買する投資法)などの短期・超短期投資家が増えてきた。

なかには、自分で判断せず、コンピュータに自動売買させてスピード勝負の(値ざや稼ぎ)をする投資家も増えている。
「そんなやつら、投資家とは言えないでしょ」と言う人もいるが、投資マネーが市場に流れ込んでいるのは確かで、彼らも投資家であることに違いはない。しかもそうしたコンピュータによる自動売買を大手の機関投資家が行っているので、株式市場は乱高下しやすくなる。

そんななか、8月11日(木)の日本経済新聞朝刊に興味深い記事が載った。それは「株価に効くのは売上高」という見出しだった。

従来、株価を動かす要因のひとつとしてとても大きな比重をもつものは「利益」といわれてきた。たとえば、経常利益が1億円、発行済みの株式数が20万株の会社があるとする。一株あたりの経常利益は500円になる。株式市場の平均をみると、一株あたり経常利益の15倍程度まで買われているので、この会社は7,500円が妥当株価になる。現実にはそれ以外の要因も加味されるわけだが、目安として使われている。

株価を上げたければ、経営者は利益をあげることを目標にすればよかった。
ところが、そんな常識が今の株式市場ではくつがえされそうだという。
日経の記事を詳しくみてみよう。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD10H9A_Q6A810C1EN1000/

以下、記事の要約。
4月~6月期の上場企業の決算発表が8月のお盆休み前に集中した。この時期、例年おこなわれる「決算トレード」がいつもとかなり様子が違っていたという。決算発表の当日、株価が瞬時に大きく反応する割に、そのサプライズが長続きしないというのだ。
今回の決算で経常増益率が大きかった企業の株価は、過去のポジティブ決算の反応に比べ約2倍上昇した。だが、8日後には完全にもとの株価に舞いもどってしまう。逆もまたしかり。ネガティブ決算は直後に大きく下げるが、10日後には決算発表前の水準を取り戻すというのだ。

その理由がコンピュータを使った自動売買。「決算トレード」は瞬時に株価が動くので投資家のなかでも存在感が高まっている。
近年の特徴は、売上高の通期予想を上げた銘柄を買って、下げた銘柄を空売りすると、その後1年にわたって高い運用成績をあげられるというのだ。一方、同じ投資戦略を利益予想の増減で手掛けてもリターンはほとんど得られない。

以上、記事の要約。

従来、「売上高ではなく利益が大事」と、利益重視経営を続けてきた日本企業。だが、投資家は企業の売上高成長力を高く評価している。
無論、利益を軽視するわけにはいかないが、いたずらに売上高を軽視するわけにも参らぬ、というのが市場の声だろう。