昨日号をご覧になった読者から、お二人のメールをご紹介したい。
・・・同感です。
タイで日本人向けサービスの事業をしています。日本から来るお客様の中で、時々日本の事を悪く言う方がいます。
「海外にいるときは貴方が日本人の代表なのだから、周りの外国人は、貴方の話で日本の国を誤解してしまいますよ。心で思ったとしても決して口にだしてはいけない。」と言う事にしています。
今の日本は確かに多くの問題を抱えています。でも、人生の先輩達からそうした発言を聞きたくはないし、まして海外ではしてもらいたくない。日本は美しい国です。そのような誇りを語ってもらいたいものです。
・・・
・・・今回の、アインシュタインの話は、とても面白かったです。実は私、最近まで日本が好きではなかったのですが、ふとしたことから、日本人のセンスの美しさや細やかさを感じて、日本を好きになってきているところでした。欧米人が、「日本人はハッキリしない、曖昧でダメだ」というのは、彼らの理解の範疇にないというだけで、劣っているというのとは違う。日本のよさを、もっと自分で理解していきたい、と思っていまして、そんな折に今日のメルマガを読んだので、不思議な一致に、なんだか心が躍ってしまいました。アインシュタインは、さすが天才ですね。欧米人なりの固定観念にとらわれず、そういったものを柔軟に感じ取るセンスがあったのでしょうね。
私もいつか、「日本旅行雑感」を読んでみたいです。
・・・
ありがとう。では、昨日の続きで博士の日記をご紹介したい。
・・・日本では全く異なっている。ここでは個人が自力に依存する度合いが欧米に比してはるかに低い。法律がそれほど後ろ盾をしているわけではないのだが、ここでは家族の絆が我が国に比べ、非常に密である。日本人が教育を通して会得している徳、あるいは多くの場合生まれながらにして十分備わっている心ばえの美しさは、世間の有形無形の“評判”という圧力のために更に完璧なものとなる。
（中略）
しかしこの国において、個人を譲る互いの緊密なつながりが我が国より維持しやすい理由はもうひとつある。それは日本独特の習慣で、自己の感情や情動を外に表さず、どのような事態にあっても冷静で余裕をたもつことである。この事実から、多くの精神的に相容れない人物どうしであっても、軋轢や紛争を生ぜずに一つの屋根に暮らしうるのである。ヨーロッパ人には不可解に映る日本人の微笑の裏の深い意味が、私はここにあるように思う。
個人の感情表現をおさえる躾が、精神の貧窮や個人そのものの抑圧につながるのだろうか。私はそう思わぬ。
・・・
“温容春のような笑顔”と当時の新聞が表現した。また神戸港におりたったアインシュタイン博士のズボンには繕いの後があり、質素をむねとする氏の一面がうかがえるエピソードだ。20世紀の科学思想を変えたとも評されたアインシュタインは、1879年3月、ドイツのウルムで生まれている。来日したのは1922年なので、博士43才のときである。没年は1955年(76才）だった。
さて、博士の日記、続きを読もう。
・・・無遠慮なことばに日本人が傷つく点ではヨーロッパ人に劣るものではない。しかし、ヨーロッパ人は直ちに反撃に転じ、目には目をの原則から十分に報復する。日本人は傷つきながら引き下がり、涙を流すのである。日本人がけんか腰の議論ができないのは、本音を隠しておるのであり誠実でないと、どれだけ批判されてきただろうか。
私のようなよそ者にとり、日本人の魂の深みまで分け入ることは容易ではない。いたる所で正装に身を包んだ人々の最大の注目を浴び、歓迎される私の耳に届く言葉は、魂の深みから静かに流れ出し、多くを語るというよりは、むしろ注意深く整えられた言葉である。
（後略）
・・・
博士が日本を去るにあたり、残した言葉がこれだ。
「日本を去るにのぞみ、日本国民に御挨拶する。殊に私に深い印象を与えるものは、この地球という星の下に、今も尚こんなに優美な芸術的伝統をもち、あの様な簡単さと、心の美しさとを備えておる一つの国民が存在しているという自覚であります。」
さらに後日談。
「中間子理論」で日本人初のノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士夫妻と初対面のとき、アインシュタインは夫妻の手をとり、涙を流して詫びたという。広島・長崎に落とされた原爆について「誠に申し訳なかった」と。ナチスの脅威に対抗するために、原爆製造の必要性を時の米国大統領に求める勧告書にサインしていたのだ。
博士がこよなく愛した日本と日本人を破壊するためにそれが使われるとは・・・。その心痛はいかばかりか。痛惜のおもいが、アインシュタインをその後、核廃絶運動にむかわせるのである。
おまけ
今、アマゾンに一点だけ在庫があるこの本、↓に、来日時の博士の日記や書簡のすべてがあるようです。ご興味のある方はどうぞ。
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