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トラウマにするかバネにするか

●「ドクターストップ」が出て、しばらくのあいだ懇親会を控えることになった。悔しいが、一日も早くドクターから解禁が出るよう、精進したい。
とはいえ、週に一回までならお許しが出ている。再開催がむずかしそうな懇親会だけに参加することになりそうだ。
昨日の大阪本気講座でも懇親会が予定されていたが、心苦しくもキャンセルさせていただいた。

そんな大阪で面白い話をお聞きしてきた。ご本人の名誉のために名は伏せる。

●某日某所。
自己啓発セミナーに参加した P 社長(内装業、55歳)は自分を変えたいと思っていた。もっと社長らしい社長になりたい。そのためには、人前で堂々とスピーチできるようになろう。自分の殻をやぶり、大いに羽ばたきたい。

●このセミナーは大人気のようで、会場には 200人を超える受講者が集まっていた。その半数は経営者で、半数は社命で参加しているビジネスピープルだった。

オリエンテーションセミナーのあと、講師がこう言った。

「ではここで、何人かの方に自己表現スピーチをしていただきましょう。お題は『わが社の経営理念』、持ち時間は10分です。我こそは!という方は挙手してください」

●気づいたら一人だけ手を挙げていた P。立ち上がって壇上に登る。
演台に立ち、聴衆を見た。そのとき、人数の多さに緊張感が一気に高まる。「うわっ、どうしよう」と後悔したがもう遅い。スピーチの準備はしていなかったが、経営理念は以前からある。それについて語れば良いだけだから、できなくはないはずだ。

●だが、ドキドキして言葉にならない。ふと前列あたりに目を落としたら、そこにはモデルのような美女たちが横一線に5人ほど並んでいた。
ちょうど伏し目になるその位置が、美女たちの黒タイツの脚線美をとらえる。「あの人、私の足ばっかり見ている」と疑われるといけない。
うかつに目も落とせない。そう思うと焦りが焦りをよび、緊張感がピークに達した。ついに自分を完全に見失ってしまった。全身の毛穴から汗が噴き出、自分が発している言葉の意味が自分でも理解できないほどに舞い上がった。

●結局、7分も残してスピーチを終えた。
恥ずかしくて、一刻も早くステージから降りたかったが、講師はその場でとどまるように命じ、講評と採点をした。

100点満点中「マイナス150点」と言われた。
“モデル“たちをみたら、顔を見合わせ失笑していた。チクショウ!と思ったが、もう終わってしまったのだ。
だが P は、講師が話している間に落ち着きを取りもどしていった。
ステージから降りる前に感想を求められた P は、今の悔しい気持ちと、本来はこんな話がしたかったという挨拶を 5分話した。

その内容は別人のように落ち着いた、経営者らしいスピーチだった。
席に戻る P に向かって「感想スピーチは100点」と講師が言ってくれ、拍手がおきた。

●そんな経験をもっている P 社長 が本気講座に来ている。

それを知らない武沢はこう言った。

「今から全員に経営理念をスピーチしていただきます。相手に応じて語り分けてください。まず社員向けに、次いでお客様向けに、最後に中学一年生向けに、お願いします。ではどなたか挙手してください」

P はここでも真っ先に挙手した。たどたどしさは残っていたが、それでも P は経営理念を相手に応じて見事に語り分けていた。
悔しさをトラウマにするのではなく、バネにした P 社長 にエールを送りたい。

これからもがんばれ! P