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企業は人なり、か?


●「企業は人なり」というが、人は素晴らしいのに会社はダメだという事もあるし、会社は素晴らしいのに人は大したことがない、という時もある。いったい何が正しいのだろう。

●「こんなに人って変わるものかね」と友人の Y。
Y の娘さんは大学生で、ハンバーガーショップでアルバイトしていた。
しかし最近、事情があって自宅の隣にある本屋でアルバイトすることになった。

●娘が本好きだったのと、本屋のおかみさんが病気療養することで、安心できるアルバイトをさがしていたのが転職の理由らしい。
Y は娘のバイト先までよく買い物に行っていた。家の中ではワガママで愛想が足りない娘なのに、ハンバーガーショップの店頭に立っている時の我が子は、明るく元気に笑顔を振りまいて魅力的な女の子だった。

●休むヒマもなくよく働く。レジではたぶん、1時間あたり1万円は売上づくりをしていただろう。それ以外にもチームの仲間とコミュニケーションを取り合いながら甲斐甲斐しく働いているのをみて、「このままこの店で正社員になってくれてもいいのに」と思ったほど。

●だが、小さい書店での新しいアルバイトはかなりヒマのようだ。
お客が 5人も入ったら満員になりそうな店なので、商品点数は知れている。入荷する本も返品する本も少ない。大半の時間をレジ台に座って過ごす。お客がいない時間が多いので、その時は本を読んで過ごしたり、時には大学のレポートも書く。
聞いてみたら1日の売上が1万円に満たないこともあるという。

●娘さんのアルバイトを整理するとこうなる。

・ハンバーガーショップ
売上は一日10万円以上を一人でさばき、仕事も面白く、彼女自身も成長できる。イキイキした表情でワクワク働くことができる。

・近所の本屋でのアルバイト
売上は一日平均2~3万円を一人でさばく。ヒマなので仕事は退屈。
あまり成長できるとは思えない。働く表情も自然に無表情になっていくし、接客も受け身になっていく。

●「企業は人なり」というが、彼女の例をみていると人材の総和がそのまま会社の実力になるのではないことがわかる。
なぜなら、彼女自身は何も変わらないのに、働く会社を変えたら別の人であるかのような働き方や成果になっていくのだから。

●人は環境や基準に合わせて仕事をするので、会社の実力とは「人材力+環境力+基準」と言えそうだ。
つまり社長の仕事は、成果が出る環境や基準を作ることである。

●そのあたり、『イノベーションのジレンマ』の作者クレイトン・クリステンセンは次のように指摘している。

・・・
組織にできることとできないことは、資源、プロセス、価値基準の三つの要因によって決まる。自分の組織がどのようなイノベーションを実現できて、どのようなイノベーションを実現できないのかを検討するとき、この三つに答えを分類することによって、組織の能力について多くのことを学ぶことができる。
・・・

●クリステンセンの言う三つの要因とは具体的に次のようなものであり、この三つの総和が組織の実力、会社の実力、ということになる。
著者の指摘にプラスして武沢の補足を加えて表現する。

・・・
1.資源
人材、設備、技術、商品デザイン、ブランド力、情報、資金、取引先(供給業者や流通業者、協力業者など)、顧客との関係など。

2.プロセス
従業員が上記の「資源」のインプットを仕事を通して価値の高い商品・サービスに変換してお客に提供するとき、組織は価値を生み出す。そのときの相互作
用、協調、コミュニケーション、意思決定の手続きなどを総称して「プロセス」という。製造プロセス、開発プロセス、調達、マーケティング、予算作成、事
業計画、予実管理、人材育成、人事評価に基づく人事の決定、給与の決定なども「プロセス」に含まれる。平たくいえば、会社の中にある仕組みすべてが「プ
ロセス」ともいえる。

3.価値基準
組織の「価値基準」とは、仕事の優先順位や判断基準を決めるときの基準ある。また、仕事の合否を決めるときの元にもなる基準のことである。おおむね、こ
れらの基準は「経営理念」や「経営方針」などで成文化されていることもあれば、社内に明確に存在する不文律として成文化されていないケースもある。
価値基準の種類は多用で、倫理的な色合いのものであったり、経済的なものであったり、デザイン的、技術的、マインド的など様々なものがある。

<つづく>

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【編集後記】

◆この週末は東京スカイツリーとソラマチ、浅草三社祭を見物してきました。どちらもすごい賑わいでした。
そして今日は本気講座 東京2期生の講座開催。あすも都内で仕事です。