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会議下手を克服したい

※会社名、個人名はすべて仮の名です。

●株式会社上脇造園の上脇源一専務(34才)は父の会社を継ぐべく、一部上場のゼネコン企業を昨年3月に退職した。

●緑化事業に強味をもつ同社は行政からの信頼が厚く、経営は安定している。社員数は25名で、その地方でも中堅の造園会社として通っている。
しかし、経営体質は旧態依然としており、この30年間で本社事務所のソロバンがパソコンに変わったことぐらいが目にみえる変化。あとは何もかわっていなかった。自然に、平均年齢だけが力強く増し加わっていった。

●社員の多くが現場職人であり、高齢化も手伝って会社の生産性は上がっていない。数年前、社長が何かの本を読んでから「うちにもナレッジワーカーがほしい」と言い出した。人事部長はあわてて新卒学生の採用を始めたが、そんな若者もすぐに現場にほうり込まれ、今では”立派な”職人になりつつある。

●そこにやってきた希望の星が源一専務なのだ。
華々しい歓迎会を開いてくれたし、社員は口々に「新・専務に期待しています」と言ってくれた。
源一はうれしさと同時に不安にもなった。「みんなの期待に応えられるだろうか?」という気持ちがどこかにある。

●俳優の反町隆史にやや似た顔と180センチ近い長身でスター性は抜群。
だが専務はゼネコン時代は設計一筋だった。後輩の面倒はみてきたが、部下を持った経験はない。チームをとりまとめた経験だって一度もない。

●だが専務は着任したその日から精力的に現場を回り、社員と対話した。
そして三ヶ月目には「経営改革委員会」を発足させ座長となった。この委員会は各部署から責任者を集めて隔週開催される。数回のミーティングを終えて、上脇造園としては次の六分野を早急に改革せねばならないという結論をだした。

・営業改革(個人ごとの営業目標数値の明確化とその達成支援策)
・現場管理改革(効率的・効果的な現場施工体制、監理体制づくり)
・人材改革(意識改革と技能教育、人間教育)
・労務改革(現場社員の慢性的なサービス残業体質の改革)
・業績改革(3年以内に経常利益3億円を突破する)
・希望改革(社員が夢と希望を持てる会社にする)

●この六つのテーマそれぞれに推進責任者を決めた。

最初は社長も会議の様子を気にかけていたが、やがて安心したのか、完全に専務に任せて会議には出なくなった。
こうして昨夏から始まった委員会は秋、冬と議論を重ね、今年に入った。ここまでは順調にみえたのだが・・・予期せぬ問題が露呈しはじめたのだ。

●最初は小さな”水漏れ”だった。

ある日の会議で、一番社歴の長い営業部長が計画書を提出できずにこう言った。
「専務、申しわけありません。先週は現場のトラブル続きでどうにも資料作りに手が回らず、この会議に間に合いませんでした」

一瞬間があったが専務はあっさりと「次回は必ずお願いしますよ」とだけ言って次の案件に移った。
「蟻の一穴」とはよく言ったもので、この小さな”水漏れ”がやがて大洪水になっていこうとは、専務も神の子でないかぎり予想できなかったようだ。

<明日につづく>