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アシミレーション

「ロンドンから秋川さんが来るらしい」。支店長代理の鈴木が行員たちに伝えた。この秋の人事異動でいままでの支店長が香港に異動になり、ロンドンにいた秋川が我が中央支店の支店長としてやって来る。

「仕事にとても厳しい人らしいけど、どの程度なの?」「聞いた話だと、土日祝日も関係なくメールがバンバン送られてくるそうだ」「会議も食事会も50分以上は絶対やらないらしい」「一日中座らない方だと聞いたこともあるわ」・・・、羽衣銀行中央支店の行員たちは新しい上司に対して戦々恐々となった。

10月1日、秋川が着任した。着任三日後に歓迎会が行われたが、互いに自己紹介するだけの簡単なものでおわった。最初の1カ月は秋川も主要顧客などへのあいさつ回りや中央支店の現状把握に忙殺されていた。

「アシミレーションをお願いします」。鈴木代理は秋川に打診した。直訳で「融和」という意味のアシミレーションは羽衣銀行の社内慣行として盛んに行われている。

着任間もない新任リーダーと組織メンバーとの間にファシリテーターを置いて、相互理解を深めるために行うミーティングのことだ。そうすることで互いの様子見の期間を短縮し組織本来の戦闘力を高めることを目的とする。

いったん全員が勢揃いしたあとリーダーが席を外すところからミーティングが始まる。そこからファシリテーターと呼ばれる進行役(通常は人事部などの部外者)が会を仕切る。そのリーダーについて知っていること、知らないこと、リーダーにやってほしいこと、やってほしくないことを列挙しまとめていく。出てきた声や質問、要望などはファシリテーターが模造紙に書いて壁に貼りだす。約2~3時間かけて模造紙を完成させたら、リーダーをふたたび部屋に呼ぶ。

「あなたの部下の皆さんの声です」と、ファシリテーターは模造紙の内容を一つ一つ説明していく。誰が言ったかは一切触れず、その内容について、リーダーに伝え、コメントを求めていく。

・週末のメールは自分が忘れないためのものなので、返事をくれるのは週明けで構わない。
・「懇親会を増やしてほしい」という声については僕自身もそれを歓迎する。
・仕事中、眉間にシワを寄せるのは考えるときのクセ。決して不機嫌なのではない。ただ、不機嫌そうに見られるのは分かっ
ているのでなるべくそのクセを出さないように努力する。
・バッドニュースこそ優先的に耳に入れろ、と言っておきながらいざ持っていくと怒った顔をする、というのは申し訳ないこ
とだ。まずは報告してくれたことに笑顔で礼を言うように努める。

「10回の飲み会より1回のアシミレーション」と言われている。とくに飲み会文化があまりない欧米で発達したコミュニケーションというのも頷ける。

リーダーは「あいつらオレのことをまだ理解していない」と言いたくなる気持ちを抑え、「あいつらに見えているオレこそ真実のオレなんだ」と発想を切り替えよう。それができるリーダーが部下と良好な関係を構築していく。

(参考:『GE の口ぐせ』安渕聖司著、PHP ビジネス新書)

『GEの口ぐせ』→ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=4398