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不得手だとどうなるか

●人はシェイクスピア(1564年4月26日 – 1616年4月23日)を「最も優れた英文学の作家」と言う。

1592年(28歳)から劇作家として脚本などを書き始め、48歳で引退するまでの約20年間に、四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残した。

私も中学生のとき、「ヴェニスの商人」で端役を演じた記憶がある。

●シェイクスピアは作品といっしょに名言も多数残している。

・最悪と言っているうちは、まだ最悪ではない
・弱き者よ、汝の名は女なり
・老人とは、子どもを二つ合わせたようなものだ
・志は記憶の奴隷にすぎない。勢いよく誕生するが、成長しにくい
・生きるべきか、死すべきか、それが問題だ
・誰の言葉にも耳をかせ。口は誰のためにも開くな。
・金を貸すと、金も友達もなくしてしまう。金を借りると、倹約の心が鈍ってしまう。
・ブルータス、お前もか!
・俺のものはお前のもの、お前のものは俺のもの
・男は結婚式の日には泣こう
・最上の男よりも悪い夫はほかにいない
・おお、ロミオ! なぜあなたはロミオなの?
・美しい妻を持っていることは地獄だ

●そんな大作家・シェークスピアも若いころはロンドンで役者をしな
がら劇場経営にも乗り出し失敗している。

得手でないことはやらないほうがよい。
それはマイケルジョーダンがプロ野球選手になったときのように、一気に平凡なプレイヤーになりさがってしまうからだ。その光景を見たファンは目を覆う。

●先ごろ日本ペンクラブの会長に就任した浅田次郎氏。
氏は若い頃、実にたくさんの職業を経験したという。自衛隊を辞めてから40種類の仕事をしたという伝説もあるが、ご本人は「それはいかにも多すぎる」と否定している。

ただ、「くすぶり」であったことは認めている。

●「くすぶり」とは貧乏神や疫病神のようなもので、彼が入った喫茶店では客がサーッと引いていく。
入社した会社はつぶれ、作家になってからも氏の連載執筆が決まった雑誌が休刊になるということが10回は続いたらしい。

要するにそういう存在のことを「くすぶり」という。

●そんな浅田氏が事業に失敗し、29歳のときにつくった借金は1億円。
「もしこの金額が1,000万円なら首をつっていたでしょうね」と浅田。

1億という金額があまりに途方もないものだっただけに実感がともなわず、平気で生きていられたという。

●そんな浅田氏が作家として日本を代表する存在になられたのだから、得手の力は絶大だ。

浅田と同じ作家仲間には、さらに変わった人がいる。

事業の借金を2億数千万円抱え、それを返すために小説家になる決意をした山本一力氏である。
氏の場合は、どうしたら借金を返せるかあらゆる方策を考えつくした最後の一手が「小説だ!これでいくしかない」と思ったそうだ。

●それが「オール讀物新人賞」の受賞につながり、さらには5年後の『あかね空』(平成14年直木賞受賞作)に結実し、借金を返済されたのだ。

そのころ、氏の本が出るたびに印税は直接債権者にいくようにしていたそうで、一度でも自分の口座を通ると惜しくなるからだった。

●「強味に集中しなさい」とドラッカーさんに言われなくても、我々は不得手なことでは成功しないように出来ているのだ。

あなたに小説を書けと薦めるのではないが、経営も考え方は同じである。うまくいかなければ素直になって別の新しい一手を考案しよう。

<参考:『すべての人生について』浅田次郎、幻冬舎文庫>

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