未分類

続・ある秘密プロジェクト

●昨日のつづき。

メールでお願いしたその日のうちにサンマーク出版の植木宣隆社長から快い返答を頂戴した。
サンマークさんといえば定期的に100万部突破の大ヒットを飛ばす会社である。『母原病』、『脳内革命』、『英語は絶対、勉強するな』、『原因結果の法則』、『小さいことにくよくよするな!』、『病気にならない生き方』など社会現象を引き起こすような著作を発表してきた。

●編集者も強者が多く、著者にたいしてなにかと注文が多い会社としても有名だ。そんな会社のトップ、植木社長が直々に原稿を読んで下さるというだけでもありがたい。

●原稿をお送りして三日後、植木社長から返答をいただいた。

「企画書と原稿をすべて拝読し、かつてなかったこの分野にこだわる作者の情熱と原稿の作り込みには頭が下がります」とあった。
しかし、同社から出版するにはテーマが限定されすぎている。だから本企画は辞退したい。これに懲りず今後ともよろしく、と締めくくられていた。

●さすが判断が早い。私は植木社長に御礼を言い、そのメールを奥様に転送した。
これだけの短時間で植木社長ご自身に読んでいただき、しかもお褒めのことばをいただいたことに感動しておられた。
サンマークさんに対する印象度がさらにアップしたに違いない。

●9月になった。
「いつ頃までに本にしたいですか?」とメールで質問した。すると、「30歳になるまでに」と返ってきた。

つまり、2011年1月2日までに本にしたいという。
実際にはまだ何も決まっていない。なのにあと4ヶ月で本になるのか心配だった。しかし原稿に力があるし、まずはお見合い相手を決めて婚約するところまでならあと一ヶ月あれば何とかなるだろうと思った。

●「すまんな武沢さん」とZからもときどきメールがきた。

「いやいや、僕はまだ何もしていない。サンマークさんに断られるのも承知の上だ。次の一手だが、もう一人ピンポイントで頼んでみたい人がいる。マネジメント社の安田喜根社長なのだがどうだろう」
「僕としてはもうお任せするしかない」

●安田社長にメールでお願いし、企画書と原稿をお送りした。
二週間後、安田社長は原稿を読みおえて私のオフィスまで訪ねてこられた。

ずいぶん丁寧に読まれたようで、同社の社員全員に回覧し、皆の判断を聞いてこられたという。年間の出版点数が小さい会社なので、一冊一冊に社運がかかっている。

「素材は大変良いが、あのままでは当社が期待する部数は売れない」と判断された。
「この著者は筋の良い方です。筋がいいだけに書き込みすぎているきらいがある。もっと大胆に主観を交えて構わないとおもう。著者はお若い女性のようなので、『女の子はこんなお店には入りたくない』と言い切ってしまっても通用するところまで論理的に書いておられる。
とにかく私から直接、著者に手紙を書いてお送りする」といわれた。

●奥様に届いた手紙には断りの言葉が書かれていたようだ。

類書がすでに何点かあり、それとの差別化ポイントが見つからなかったのではなかろうか。作った本が安定的に売れていくような販売組織があれば出版社としても心強いのだが、組織をもたない無名の新人作家のもろさを指摘されたかっこうだ。

●そんな結果でも、奥様はプラス発想だった。

「残念な結果ではありましたが、”七転八起で起き上がり続ければ、必ず勝つ”という私の好きな言葉にのっとり、頑張りたいと思います!」とあった。

さすがZの奥さんだ。

●マフラーを取り出した。9月もあと数日しか残っていない。この調子ならあっという間に年を越してしまう。何とか20代のうちに作家デビューという彼女の夢を果たしてもらおうと作戦モードのレバーを入れ替えた。

●広告がらみや個人的つながりがある出版社にアタックしよう。
しかも実務書の発行経験がある四社だけに同時アプローチしようと思った。そのむね奥様にもお伝えし、了解をいただいた。

・日本実業出版社
・実業之日本社
・PHP出版社
・こう書房

の四社だ。

●もう秋本番。ご主人のZも奥様に入れ知恵したようである。

「普通に原稿を送っただけではインパクトがうすい。看板の本なのだから原稿の上に手作り看板を乗せて送ったらどうか」

そうして出版社に送り届けられたのがこの原稿。これならインパクト抜群だ。

★看板付き原稿
→ http://www.flickr.com/photos/takezawa/5473142308/

●良い出版社は仕事が早い。すぐにしかるべき部署に原稿を回していただきすぐに返答がきた。そして日本実業出版社さんが「一度作者に会ってみたい」と回答してくれた。

●「いよいよ明後日、出版社まで会いに行きます」と奥様から連絡を受けた。

私はひとつだけアドバイスを送った。
「何をいわれても”お任せします”で通すこと。仮に印税が10%といわれようが5%と言われようが、なにひとつ顔に出さずに”お任せします”と。発売が1月になろうが3月になろうがお任せします、と。主張は少ないほうがよい」

●11月下旬になった。私は和僑会の大会で沖縄にきていた。
そこへ吉方が舞い込んだ。「決まりました!何だか、まだ実感がなくて、まるで夢の中にいるようです。フワフワしていて、メールの文面もうまく、浮かびません!」とある。
その夜、Zと奥様は二人でシャンパンをあけながら電話してこられた。
私も沖縄で三次会のクラブにいた。私はシャンパンではなく泡盛で祝った。

●ずいぶん編集段階で時間がかかった。
写真はオールカラー。二色刷原稿とかなりコストが高そうな本になった。イラストもふんだんに入っている。
それでいて値段は1,500円(税別)と買いやすい。
最初に新丸ビルで読んだ原稿とはずいぶん雰囲気が違っているのは、編集者と出版社の仕事のおかげ。

●今月2月10日に発売になった。

著者の名は中村心(なかむら こころ)さん。
本のタイトルは『店頭〈手書き〉ボードの描き方・作り方 つい入りたくなるお店がやっている』(日本実業出版社)という。

amazonキャンペーンはやらないが、出版社は販促に力を入れているようで異例の好位キープである。
小売店や飲食店をやっている方は是非お読み願いたい。

⇒ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=2880