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老人はもっと遠慮しよう

●「世界」では勝てるのに、なぜ「アジア」で勝てないのか。

五輪二連覇中の北島康介選手(水泳)がまさかの4位に沈み、柔道では100キロ級の世界王者・穴井隆将選手が韓国選手に決勝で一本負けを喫するなど日本チームの気勢がいまひとつ盛り上がらないアジア大会。

●明らかに格下の19歳の選手に一本負けした柔道選手がいたが、勝って当たり前だという気持ちが少しでもあると相手をなめてしまって足もとをすくわれる。

●「そんなことは当然だ」という意識は人を不遜にさせるもののようだ。
一つの要因は年齢。周囲の多くが年下になると、怖いものがなくなってくる。もう一つの要因はおごり。
それぐらいのことはして当然、されて当然、できて当然だ。「オレ様を誰だと思っているんだ?」という意識が人を不遜にさせる。

●私も40代まではものすごく謙虚だったのに、最近は我ながら不貞不貞しくなったと思うことがある。
「私のカバンをもちなさいよ。あなたも気が利かない人だね」と言ってしまったこともある。
一応、彼の将来を思って心づかいを教えたつもりだが、実際は「持ってくれて当然でしょ。よそではみんな持ってくれるよ」という気持ちの方が強かった。

●先日も、コンビニのレジで大行列ができているのに一台しか開いていない。作業の手際も悪いので、「ちょっと早くしなさい」と大声を出したら奥から二人もアルバイトが出てきた。
「なんだ、いるのか。何やってんだよ」と怒鳴ってしまった。以前の私だったら大声など出さずにだまって買い物を諦めたことだろう。
声を出して注意するなど、恥ずかしくてできなかった。

●この場合、お店側に問題があったのは確かだ。マニュアルではレジに行列ができたら他のスタッフを呼んでレジを増やすことになっているはずだ。
だから、それに気づかないスタッフに注意してあげるのは悪くないが、大声で「なにやってるんだ」と怒鳴る必要はなかった。それに慣れてしまうと、今度は別の場所でそれをやる。やがて気に入らないことがあると、ところ構わずやる。

●こんなこともあった。
かみさんと二人でピザを食べに行った。サービスも味もお粗末だったのでレジで店長に文句をいった。
「頼んだワインが遅すぎる」「ナポリピザの割にはもっちり感がない」などと言ったら、「申しわけございませんでした。改善いたしますのでこれに懲りず、是非またお願いします」と言われた。
私は「たぶんもう来ません」と店を出た。その様子をみていた家内は、「恥ずかしいからやめてほしい」と言ったが「言ってやらないと店も分からないでしょ」と言い返した。

●「主張しないことは損だ」という意識がでることを老化という。

曽野綾子さんの『老いの才覚』に「くれない指数」という言葉が紹介されている。
「取ってくれない」「もってくれない」「してくれない」など、「○○してくれない?」と他人を当てにするようになることが「くれない指数」が上がってきた証拠なのだとか。
つまりそれが老化であると曽野氏。

●恥じらうことよりも権利を主張する意識が強くなってきたら、注意しよう。それは老化の表れであると同時に、戦後の行きすぎた権利と平等と自由の教育の弊害でもある。

「年金の受け取りが減るから仕事はこれだけしかやらない」と考える人が多いそうだが、それも本来、逆だろう。
「仕事をするから年金はいらない」「仕事をこれだけやるから年金は減らしてもらって構わない」と考えるのが筋である。

●周囲に対して「○○してくれて当然」と思うのをやめよう。

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誰かに何かの依存をしない。老後のことを家族や行政に面倒みてもらおうとも思わない。自分のことは自分でするし、もし何かのサービスを受けねばならないときには対価をしはらってそれを受ける。対価が払えないときにはのたれ死にしても構わない。
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そう覚悟することが「老いの才覚」であるという曽野氏の説は傾聴に値する。

●曽野氏は、「老人はもう少し遠慮すべき」として高齢者に与えられた権利を放棄したほうがいいとも述べている。
たしかに、食べ放題の焼肉店で暴食して後悔するのは若者だけに許されることであって大人がそんなことをしていては恥ずかしいだけだ。

曽野氏の夫・三浦朱門氏もれっきとした高齢者だが、映画館の割引も使わないそうだ。映画館の「夫婦50割引」制度は大好評らしいが、私もそれを利用するのを自粛しようと思った。いや、コンビニやレストランで不満があっても、お願いはすれど、文句は言わないと決めた。