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孔明の嫁

●「うちの会社は男性も女性もイケメンばかりですから、パーティは華やかで盛り上がりますよ~」とある会社のOB社員。

その会社は、器量が良くないと入社できないらしい。たとえ、どんなに才能があっても不器量だと選考から外される。
そういえばその会社の社長もテレビで見るかぎりかなりイケメン社長である。

●「じゃあ僕はダメだね」と謙遜して言ったのだが、「はい、武沢さんは不採用間違いない」と彼。悔しさまぎれに言うのではないが、そんな会社はよろしくない。

●最近は、男女ともイケメン全盛の時代、不器量な人間が活躍できる余地は乏しくなっているのだろうか。

そんなはずはない。

逆に、そんな時代だからこそ、才能や心構えに着目した採用をすれば、難なく好人材がとれるのだ。

●嫁選びもそうらしい。
あなたは、「孔明の嫁選び」という言葉をご存知だろうか。

あるとき、地方の名士だった黄承彦は若者エリートの孔明にこう言った。

「君が嫁を探していると聞いた。私には色が黒くて醜い娘がいる。だが、才知にかけては君の嫁にふさわしい娘だがどうだろう?」

●すでに25歳になっていた孔明は、その申し入れをあっさり受け入れた。その当時、15歳くらいで結婚するのが当たり前で、すでに婚期がすぎていた孔明。
とはいえ、良家の血筋で才能豊か、背が高くてイケメンの孔明。
黄承彦といえども、まさか自分の娘(しかも不器量な)をもらってくれるとは夢にも思っていなかっただろう。ダメ元で申し入れたのだった。しかし孔明にあっさり受け入れられ、気が変わらないうちにと、娘を車に乗せてすぐに送り届けたという。

●周囲ではこの縁談をひやかして、「孔明の嫁選びを真似てはいけない」とはやし立てた。

それ以降、不器量の嫁をもらうことを「孔明の嫁選び」と呼ぶようになった。

●孔明の息子も回顧談で、「母は不器量だったが・・・」と語っているが、孔明の妻は本当に不器量だったようだ。
反面、才知が豊かだったのも本当のようで、機転がきく働きをたくさんしている。内助の功があっての天才軍師・孔明だったようだ。

●ある日、諸葛孔明の家に急な来客があった。しかもかなりの人数である。
ちょうど食事時だったが、客にはなにも用意していない。だが、孔明の嫁は、すべての客に行き渡るようにうどんをふるまった。
「いつの間にうどんを打ったのだろう」と不思議に思った孔明が厨房をのぞくと、麺打ち機で高速に麺を打っていたという。
まさかそんなものを自分で開発しているとは・・。孔明は舌を巻いた。
家事はもちろんのこと、日頃から創意工夫を惜しまぬ嫁だったからこそ孔明をサポートできたのだろう。

●孔明の嫁のように、目に見えないところで日頃から努力している人は宝である。そういう人こそ、家庭でも会社でも宝である。

いくら器量良しであったとしても、才知に乏しく、創意工夫できない人はやがて周囲から重荷扱いされるはずだ。

だからこそ、器量だけで人選するのは止そうではないか。