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続・紹介獲得物語

「何やってるんだ専務、一年の4分の1が終わっちゃったじゃないか。いまだにトンネルの抜け道が見えないのか。プロジェクトの軌道修正やメンバーの変更も含めて君の計画を聞こうじゃないか。」

岡本三郎社長は弟の五郎専務には遠慮がない。二人きりになると言葉を選ぶことなく会話がすすむ。同席した者にとっては、まるで兄が弟を一方的に叱っているようにうつる。

事実、この3ヶ月で得た成果は以下の通り惨たんたるものであり、プロジェクトを管理する立場の五郎専務は返す言葉がない。

「この暗いトンネルには必ず抜け道がある。今はそれしか言えません。もう少し時間を下さい。」

そう言うのがやっとだった。

1.紹介獲得キャンペーン

グァム旅行やソニーバイオを景品に付けたにもかかわらず、45日間に及んだ紹介獲得キャンペーンは失敗だった。過去の全  顧客に紹介依頼状を社長名で出し、抽選で景品が当たるという特典を付けた。営業マンはこれを持って有力客を回り、口頭で  説明を徹底させた。だが、このキャンペーンで得るべき紹介者数は、目標50名に対して4名と超低調に終わった。

2.紹介マニュアルの作成

既存客を訪問して住宅のフォローを兼ねながら紹介客を獲得するトークを作り上げた。トークのマニュアル化を行い、ロール  プレイイングを徹底し、顧客の前でこれを使った。謝礼制度やマイレージ制度の説明パンフレットを手渡ししながら、紹介依  頼を行った。だが顧客からの反応は、判で押したように「じゃ、考えておくからね」だった。この作戦から得た紹介客は2名  だった。

3.紹介謝礼制度と4.紹介マイレージ制度は昨日の号でお伝えした通りの作戦内容だ。

暮れも押し迫った昨年12月下旬。活路が見いだせないまま、とうとうプロジェクトで忘年会を行う日がやってきた。

「佐野君おそいねぇ」

「ええ、あいつは今日が今年最後の商談日で、クロージングの日なんですよ。今日うまく受注できれば佐野君にとっては最高の忘年会なんですがね。」

「そうか、じゃ先にやってよう。みんな、おつかれー!いろいろ課題山積だけど、何はともあれ今年もこんな日がやってきました。そう、年を忘れて、新しい一年に期待してせいぜい飲もうじゃないか。とにかくカンパーイ!」

専務の音頭で忘年会が始まった。

その直後、佐野が血相を変えて忘年会場に駆けつけた。

「どうだった佐野君。先に始めてたよ。ま、駆けつけ3杯と行こう。」

「専務、大変です。タイヘン。」

「どうした?受注が決まったのか?」

「決まったどころの騒ぎじゃないんです。注文をくれたのはもちろん、別の有力なお客さんを9人も紹介してくれたんです。9人も。」

「なに~っ!9人。スゲェ。佐野、お前は一体なにをやったんだ。」

実は佐野のあるミスが、偶然にも好結果につながったのだ。

<来週につづく>