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買わねぐていいんだ。


●「ねえムーミン、こっちむいて」の『ムーミンのテーマ』や『ひょっこりひょうたん島』などでおなじみの人気作家・井上ひさしさんがお亡くなりになった。大好きな作家だっただけに残念である。

●私にとっての井上さんは、なんと言っても20代に読んだ『吉里吉里人』(きりきりじん)で、大いに笑わされただけでなく、物語の予期せぬ展開にハラハラしたものだ。

吉里吉里人について、ウィキペディアでこう解説されている。

・・・東北のある寒村が日本政府に愛想を尽かし、突如「吉里吉里国」を名乗り独立を宣言する。当然、日本政府はこれに反発。独立を阻止すべく策を講じたが、吉里吉里側は食料やエネルギーの自給自足で足元を固め、高度な医学や金本位制、タックス・ヘイヴンといった切り札を世界各国にアピールすることで存続をはかる。その攻防を含む1日半の出来事を、全28章にわたって描写した作品。
・・・

●今こうして内容を紹介しているだけでまた読みたくなってくるほど。

この本の会話のやりとりの多くが吉里吉里国の標準語、つまり東北弁なのである。なにしろ山形県出身の井上さんにとって東北弁は十八番。

そもそも標準語とは首都にいる人の言葉であり、首都以外のことを地方といい、地方の言葉を「方言」と言うのは、中央にいるお上の思い上がりが感じられなくもない。

●日本全体が東京を目指していた時代には、若者の多くがオラが郷土の方言にコンプレックスを感じ、無理してでも標準語を使ったものだ。だが、それも昔のこと。
徐々に方言も見直され、訛りをウリにするタレントや政治家が増えはじめるなど、方言の復活は地方分権を促進する大切なテーマなのかもしれないと思えるほど。

●gooによる「方言がカッコイイと感じる人の出身県ランキング」上位20県は次の通り。ある意味、意外な結果で驚いている。

1位:大阪府、2位:東京都、3位:福岡県、4位:広島県、
5位:神奈川県、6位:京都府、7位:沖縄県、8位:鹿児島県、
9位:兵庫県、10位:高知県、11位:熊本県、12位:長崎県、
13位:北海道、14位:愛知県、15位:岡山県、16位:青森県、
17位:宮崎県、18位:佐賀県、19位:大分県、20位:秋田県
となっている。
→ http://cache001.ranking.goo.ne.jp/crnk/ranking/999/dialect_cool/p1/

●同じgooのランキングでも、「方言がカワイイと感じる人の出身県ラ
ンキング」となると少し様相が変わってくる。上位20県は次の通り。

1位:京都府、2位:大阪府、3位:福岡県、4位:沖縄県、
5位:青森県、6位:秋田県、7位:北海道、8位:山形県、
9位:兵庫県、10位:岩手県、11位:福島県、12位:広島県、
13位:宮城県、14位:東京都、15位:奈良県、16位:宮崎県、
17位:熊本県、18位:茨城県、19位:栃木県、20位:鹿児島県
→ http://cache001.ranking.goo.ne.jp/crnk/ranking/999/dialect_cute/p1/

●全国ネットのアナウンサーが標準語は使うのは当然だが、ローカル局のアナウンサーの多くは意識的に方言を使っているようだ。
それと同様に、地方の小売店や飲食、サービス業などでは、もっともっと方言を使っていこう。

●「売上げアップの秘訣は方言」と語るのは、カリスマ車内販売員の茂木久美子さん。
山形新幹線「つばさ号」に勤務する彼女は、いわゆる標準語の接客五大用語などは決して使わない。

「コーヒーはあったかいのど、つったいの、どっちがいいべ」、「ミルクはつけっぺか」「砂糖は何本いんべ」

などと山形弁で接客する。彼女が通り過ぎる席の周囲では、自然に笑いがおきるというが、私も一度彼女から弁当を買ってみたい。

●以前は、不意に出てしまう山形弁を「恥ずかしい」と思い、つとめて隠してきたそうだ。
だがある時、自然に出てしまった東北弁。それを聞いたお客が山形の名所を尋ねてくれた。もし自分が方言を話さなかったら尋ねられなかったに違いない。
そう思うと、「標準語じゃなくてもいいんだ」と感じ、それ以降は方言にためらいがなくなった。

●あれから9年、「だれもが売れないモノも茂木なら売れる」と言われるトップアテンダントになった彼女。

さまざまな乗客が彼女のもとに集まる。友人との死別やいじめの相談なども受けた。ワゴンを止め、じっと耳を傾け、一緒に涙を流すこともある。酒におぼれる乗客がいれば、「これで最後にすっぴゃ」と諭す。
そんな彼女に講演依頼が殺到し、テレビや新聞、雑誌でも絶賛されている。そして先月、ついに本にもなった。

「買わせない」、だから「欲しくなる」

サービスの達人の心意気とワザがこの一冊にある。

★『買わねぐていいんだ。』(茂木久美子著、インフォレスト発行)
⇒ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=2429