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虚心坦懐

●昨夜から東京入りしている。

京都のホテルにメガネを置き忘れてきたせいで、細かいものが何も見えない。本やメールはまったく読めず、今書いているこの原稿すら判読できず閉口している。
このままではやってゆけないので、メルマガを書き上げ次第メガネ屋に走ろうと思う。

●さて、夕べはS社長ご夫妻と東京に移動し、ジャズタクシーの安西さんにお引き合わせしたあと一人で神田に向かった。

あんこう鍋で有名な「いせ源」さんで待っていて下さったのは三人の方。
独自の検索エンジンを開発するベンチャー企業のM社長、楽天技術研究所のTさん、リクルートの進学カンパニーのTさん(女性)というめずらしい顔ぶれ。
彼ら三人は京都つながりの旧知の仲であり、「がんばれ社長!」読者でもある。

●興味深い話題がたくさん出て、おいしい鍋を味わっている余裕がないほど。
「iPad」(アイパッド)は買いか否かという愚問を発した私に向かってMさんが「武沢さん、5万円なのですから」のひとこと。
要するに、悩んで議論をしているヒマがあれば、すぐに「iPad」を入手して自分で結論を出すべきだという。たしかに貧乏学生じゃないのだから、仕事に関連があって興味をひくものはとりあえず買うというのが、無謀ながら正しい判断法かもしれない。

●WEBの発展と変化が社会の変化を巻き起こし、私たちの生活やビジネス、会社経営を根底から変えてきた。

「インターネットがなかったら、楽天の三木谷さんは今頃何してたんだろうね?」と私が質問した。Tさんはあっさりこう言った。

「それはそれで別の道で成功されたでしょうね。楽天という会社を立ち上げること以外にも複数のビジネスアイデアを持っていたと聞いたことがあります」

●なるほど、大したものだ。私など、インターネットがなかったら、単なるおじさんである。
本を書くことやメルマガ発行で収入を得ることや、和僑会などという世界規模の起業家組織で顧問をやるなど、あり得ないことである。
ましてや、各地に世代を超えた友人がワンサカいるなんて、絶対不可能なことだった。
その絶対不可能が可能になるわけだから、「絶対」という言葉は使えない。

●WEBは世界を変え、私の周囲を変え、私をも変えた。それは0が1に変わったぐらいに大きな変化だった。
さらに今後のWEB変化は、1を2に変えるのか3に変えるのか、はたまた10か100になるのかは誰にも分からない。

だが、0が1に変わるほどの大きなWEB大変化がこれから起きようとしているのは間違いないらしい。
あっという間に置いてけぼりをくらうリスクと、自分でも想像できないほど大成功するチャンスがWEBには転がっている。

●私たち経営者はWEB関連情報を無視したり軽視したりせず、定期的に情報を仕入れていこう。必ずしもWEB変化の最先端にいる必要はないかもしれないが、情報だけは定期的に仕入れておかないと、言葉が通じなくなり、やがて時代に対して疎外感を感じるようになるだろう。

●そうならないためにも、何はさておき「虚心坦懐」(きょしん たんかい)になること。
つまり、「オレは知っている、私は分かっている」というおごりを捨て、一切の偏見やわだかまりを持たず、無心になって心を開くことである。時々、若い人たちとご飯を食べて素直に教えを乞おう。

●昨夜の鍋パーティの席上、私は誕生日ケーキをサプライズプレゼントされた。
「いせ源」店内にひびき渡る声でハッピーバースデーを歌っていただいた。「56才なのでもういいよ」と言いながらも、ありがたくローソクを吹き消した。
感動しながら美味なケーキを食べていたら、今度は一冊の本をプレゼントされた。

●”クラウドもツイッターもiPadも、すべてはひとつの大きなうねりの中にある”と楽天研究所の森正弥所長が書いた『ウェブ大変化』という本である。気鋭の論客らしい。

それは暗に、「武沢さんも次の成長戦略を打ち出して下さいよ」、という彼らからの激励ではないかと思った。ありがたくそれを受け取り、「WEBの前にまずメガネを入手してから読んでみる」とお礼を申し上げた。