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一気にやっても三年かかる

●ものごとは急ぎすぎてはうまくいかないことを「急いてはことをし損じる」と先人達が教訓した。

機が熟すのを待ってじっくりやってゆこうという教えなのだが、フランスの革命家・ブランキはそれと真逆のことを言っている。
「48時間以内に革命を起こしてみせる」というのだ。彼の自信をうかがわせると同時に、革命というものは一気にやってしまうものなんだという戒めにも聞こえる。

●私も性分として、じっくりやるか一気にやるかと聞かれたら迷わず「一気」を選ぶだろう。
だから今日は、一気にやる、しかも一人でやる、ということの大切さを考えてみたい。

●あいにく雨天中止となった今日の高校野球。例によって私は、故郷・岐阜県の代表校(大垣日大)を応援することになる。

かつて岐阜県は「野球王国」の名をほしいままにしたことがあるのをご存知だろうか。岐阜県の代表校はいつも優勝候補の一角にあがり、事実、何度も決勝進出を果たしてきた。(戦前・戦後のころ)

●しかし、昭和40年代以降は不振が続き、ほとんど目立った活躍をしていない。特に最近、北海道や東北、沖縄など、かつての野球が強くなかったところがメキメキ頭角を現し、地域格差がなくなってきた。

●そんな中でいつも甲子園初戦敗退。
それに業を煮やしたOB達がついに立ち上がり、「岐阜県代表校を優勝させる」プロジェクトが発足したのだ。
私の記憶が正しければ、「5年以内に優勝させるための有識者会議」だったと思うが、皮肉なことにそれが報じられたとたんに大垣日大高校が2007年の選抜大会で準優勝してしまった。

●その後、プロジェクトがどうなったか知らないが、ニュースがないところをみると、必要がなくなってプロジェクトを解散した可能性もある。

●私が思うに、ひとつの県全体の底力を上げるのにプロジェクトチームなんか要らない。
それよりも、どこか突出したチームを作れば良い。それには、一人の強いリーダー(監督)を招けばよい。あとは、そのリーダーを財政的にも精神的にも支援するスポンサー(校長)がいれば充分だろう。

その正しさを大垣日大高校の校長と阪口慶三監督が証明した。大垣日大の快進撃に刺激をうけた県岐商や中京など他の高校も強くなり、岐阜県代表が立て続けに甲子園でベスト8以上に残るようになってきた。

ちなみに以下、大垣日大高校の戦績をご紹介する。
これをご覧になると、同校は岐阜県ではまったく無敵だが、東海地区大会以降は、相手と競りあって勝つという図太さやたくましさが出てきたように思う。

▽秋季西濃地区予選
リーグ戦 ○ 14-3 海津明誠
リーグ戦 ○ 11-1 大垣北
リーグ戦 ○ 16-2 揖斐
リーグ戦 ○ 16-0 大垣東
リーグ戦 ○  9-2 大垣南
リーグ戦 ○  4-0 大垣商

▽秋季岐阜県大会 優勝
1回戦 ○  3-1 麗澤瑞浪
2回戦 ○  5-2 岐山
準々決 ○  4-1 土岐商
準決勝 ○  7-1 岐阜総合
決勝  ○ 13-3 県岐阜商

▽秋季東海地区大会 優勝
準々決 ○  2-0 常葉橘(静岡)
準決勝 ○  3-2 中京(岐阜)
決勝  ○  5-4 中京大中京(愛知)

▽明治神宮大会 優勝
2回戦 ○  7-6 嘉手納(九州・沖縄)
準決勝 ○  4-1 今治西(四国・愛媛)
決勝  ○ 10-9 東海大相模(関東・神奈川)

●かつて、阪神タイガースが万年最下位争いをしていたころ、弱い原因はフロントの体質にあると言われた。原因はそうとう根深く、フロント人事から一新しないとチームの再建は無理だろうとも言われていた。
だが、そこに闘将・星野仙一が監督としてやってきて、アッという間に優勝争いするチームに立て直し、三年目に優勝した。
就任一年目のオープン戦から勝ちにこだわり、自分たちはプロとして勝つためにやっているし、勝つことが大切なんだという意識改革をした。

●再建を期待された阪口監督と星野監督。そのチーム再建は、時間をかけてゆっくりやったものではない。一気にやったのだ。

それでも結果として阪口慶三監督が甲子園で準優勝し、星野仙一監督がセリーグ優勝するのに共に三年の歳月を必要としている。

一気にやっても時間はかかるものなのだ。最初からじっくりやっていたら、10年や20年かかったかもしれない。いや、時間切れで再建はならなかった可能性が高い。

それが再建に取り組む者のスタンスだと思う。