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儒教、宗教、そしてマンダラ

●世界の宗教の信者数は、キリスト教の20億人(33%)、イスラム教(イスラーム)13億人(22%)、ヒンドゥー教9億人(15%) 、仏教3億6000万人(6%)、儒教・道教2億3000万人(4%)、無宗教8億5000万人(14%)、その他(6%程度)である。(ウィキペディアより)

●これだけをみたら、世界三大宗教はキリスト、イスラム、ヒンドゥーとなるが、実際はそうではない。
特定の地域や民族にのみ信仰される宗教は「民族宗教」と呼ばれ、ヒンドゥー教やユダヤ教、神道などがそれにあたる。
それに対して人種や民族、文化圏の枠を超え広範な人々に広まっている宗教を「世界宗教」と呼び、キリスト教、イスラム教、仏教がそれである。

●また、「儒教は宗教か?」という議論は今なお続いている。
そもそも「宗教とは、人間の力や自然の力を超えた存在を中心とする観念である」(ウィキペディア)。

当然、宗教の信者同士はみな平等であり、男尊女卑や身分制度などを前提にしていないのが一般的な宗教だ。死んだあとどうなるのかも分かっているのが各宗教の共通点。
しかし儒教には平等思想がなく、死後の世界観もないことから「宗教ではない」とされる根拠になっている。
だが、その結論はまだ出ていないのだ。

●空海(774年~835年)は平安時代に活躍した日本真言宗の開祖。
遣唐使として中国に渡り、真言密教の秘法を日本に持ち帰った日本仏教界屈指の傑物である。

●その空海は15才のころ、徹底的に学んだのが儒教である。
特に論語と孝教と史伝を学んだといわれる。そして空海が24歳になったとき、儒教・道教・仏教の比較をした著書を書いた。
それが、『聾瞽指帰(ろうごしいき)』といい、後に『三教指帰』(さんごうしいき)と改題された。

●『三教指帰』は、寓意小説に託した空海自身の出家宣言である。

小説の登場人物は、蛭牙公子、兎角公、亀毛先生、虚亡隠士、仮名乞児の五人。
儒教を支持する亀毛先生が虚亡隠士の支持する道教に批判される。だが最後に、その道教の教えも、仮名乞児が支持する仏教によって論破され、仏教の教えが儒教・道教・仏教の三教の中で最善であることが示された本だ。
こうした問答体系によって分かりやすく大衆に語りかける文章力は、空海がもっとも得意とするところであったという。

●密教の二大教典は『金剛頂経』(こんごうちょうきょう)と『大日経』(だいにちきょう)だが、その『大日教』との出会いが空海をして中国(唐)への渡航を決断させたと言われる。

●有名な密教マンダラ(曼荼羅、曼陀羅)には「金剛界マンダラ」と「胎蔵界マンダラ」のふたつがある。

二大経典のひとつ『金剛頂経』の世界を造形したのが金剛界マンダラで、『大日経』の世界を造形したものが胎蔵界マンダラだ。

●金剛界マンダラは、人の心の中味をビジュアル化したもので、心の本質、つまり「唯識」(ゆいしき)の世界を表現した。
一方の胎蔵界マンダラは宇宙の本質、つまり「空」(くう)の世界の豊かさを映像化したものである。
「空」とは、この世のすべてに実体はなく、それにかかわる人の心から生まれる「縁」によって形作られていることを解き明かしたものだ。

●一昨日、大手町で開催された株式会社クローバ経営研究所の月例セミナーのメインテーマがずばり「マンダラの知恵」。

密教経典・『金剛頂経』と『大日経』の教えのエキスを松村先生が解説し、それを現代の生活やビジネスにどう活かすかを学んだ。

●『大日経』が教える「三句の法門」(さんくのほうもん)は、まさしく経営者が忘れずに持ちつづけたい哲学をわずか21文字で表現しきっている。
また空海が解き明かした「十住心」(じゅうじゅうしん)は、人間の心の十段階を解説し、その中で儒教と仏教の位置づけを明確にしただけでなく、天台宗や華厳宗と空海の真言密教との違いにも言及していて興味が尽きない。
この月例セミナーで何年か学ぶうち、たまらなく面白くなってきた。

<紙面が尽きたので来週につづく>