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続・経営計画発表会について


●昨日、「経営計画発表会」について書いたところ、ある社長からこんなメールを頂戴した。

・・・私の会社はまだ発表会をやったことがありませんが、ある時、友人の会社の経営計画発表会に招かれ、行ってみました。
一番印象に残ってるところは、毎週金曜日に掃除をキチンとすること、でした・・。
と言うのも、普段そこの会社の工場にもよく行きましたが、お世辞にもきれいだとは言い難かったので「おぉ、これからはキチンと掃除するのか」と感心した記憶があります。
しかしその後、毎週金曜日に掃除してる気配はなく、「なんだかなぁ」と思いました。やはり、発表会のその後が肝心ですね。
・・・

●この会社に限らず、ほとんどすべての会社が号令倒れに終わった経験をもっている。
少しでもそうならないようにするために「経営計画書」を作るのだが、その経営計画書までもが号令倒れになっているとしたら、規律の文化からは遠ざかる一方なので何とかしたい。

●リーダーは意識的に規律の文化を作り、目標や計画に対する信頼感と権威を構築していこう。
それには、まずはトップ自らが襟を正し、約束を守るリーダーになろう。目標や約束ごとは、誠実にフォローするのだ。

たとえば、「このプロジェクトを成功させたらみんなで高級焼肉店に行こう!」と発言したのなら、それを守る。
もし未達成だったら、それもきっちりフォローする。ウヤムヤの立ち消えが一番よくない。

●「約束を守るリーダー」という信頼が出てきたら、今度は「約束を守らせるリーダー」でもあるという評価を勝ち取ろう。

昨夜の「がんばれ!ナイト」には、フェイス総研グループの小倉広社長に講演していただいた。人と組織をどう作るか、というテーマで同社の最近の取り組み事例を生々しく語っていただいたのだが、こんな興味深いお話しが出てきた。

●ある時、フェイス総研では社員間のコミュニケーションを活性化するために日報を活用しようということになった。
社員40人が全員日報を書くと決まったのだが、なかなか日報があがってこない。再三再四要求しても、ほめても叱っても何をしても日報が出ない。そこで困り果てた小倉社長はどうしたか。

日報提出を諦めたのか?それとも強権発動したのか?

●「ここで私(小倉)が安易な妥協をしては規律の文化が生まれない。
だから、日報を集めるという会社の決定事項を社員に守ってもらうために、『日報担当者』を一名置くことにした。仮にその担当者をA君とする。
A君の毎朝一番の仕事は、日報を出さなかった社員全員に内線電話して昨日の日報内容を口頭で聞く。それをA君が日報の書式に文章入力して全員分の日報を集める。それだけで毎日二時間以上かかる仕事量だった。もちろんA君の仕事はそれが本業ではない。いままで通り、営業の仕事を抱えている。そんなA君の様子をみて仲間たちは、『すまんなA君。明日からは自分で書くから』と謝るようになり、徐々に提出が増えていき、二ヶ月もしないうちにA君は誰にも内線電話をかけなくても済むようになった」

●これが「約束を守らせるリーダー」の仕事だと思う。怒鳴ったり大声で叱ったりしてやらせるのではなく、社員を正しくしつけ、ルールを守る仕組みを作るのだ。

●「今期はこれに挑戦しよう」「新しくこれをやろう!」と新しい目標を掲げる。社員全員がそれに向かって足並みを揃えてほしいのだが、様々な抵抗に遭うことが多い。たとえば、社員から発せられる脅しまがいの究極の二択質問。

「社長、平日に掃除をやるということは生産が止まって売上が減ることになりますが、本当にそれでもいいのですね?」

「社長、私にその仕事をやれということは、今のこの仕事は締め切りに遅れても良いということですね」

これらの質問は「私と仕事とどっちが大切」という難題に近い。
「今の仕事と新しい仕事とどっちが大切」と聞いているからだ。
この場合の名回答はジャック・ウエルチ(元・GE社長)のこの発言。

「車を運転しながら同時にタイヤを換えられる人間たれ」

●リーダーがそうした確固たる哲学をもっていないと、会社の生産性はいっこうに上がらない。生産性が上がらないということは利益率が向上せず、社員に分配する賃金アップの原資や勤務時間短縮余力も増えないということだ。

●生産性向上と業務の革新を阻む言葉を職場から一掃しよう。
「やれません」「無理です」「時間がありません」「人を入れて下さい」「面倒くさい」「むずかしいですね」・・・。

だが、そういう言葉を発する社員はレベルが低いか、というと一概にそうとも言えない。
一方的に上司から目標を発表されたとしたら、私だって抵抗するだろう。ありとあらゆるロジックを使って「それは出来ない」と言うだろう。
それは、感情的な反発を招くような経営計画の作り方と発表会のやり方に問題があるからだ。

●「経営計画発表会」というのは社員から抵抗感情を引き出しやすい。
まず、社員の発言が許されそうもない雰囲気のなか、周囲には主力取引先や銀行などから来賓が来ている。社員は着慣れないスーツを着て、分刻みで進行する会議。これでは完ぺきな上意下達でストレスを感じないほうがおかしい。

●権威主義者が好むようなそうしたやり方ではなく、フランクに率直にやろう。
セレモニーとしての「経営計画発表会」の翌日からは、社員と1対1で経営計画ミーティングをやるのだ。
一人ひとり理解力も違えば、仕事の内容も違うからだ。もし、社員数が多くて1対1のミーティングが困難な場合は、部署単位、支店単位でやってもよい。それを年に一回ではなく、四半期単位、毎月単位でやっていく。

●そうなれば、セレモニーとしての「経営計画発表会」のあり方は変わってくる。発表の場というよりは、社員とその家族、協力企業や関係者を表彰するためのコンベンションになっていくだろう。