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日本のストーンズ

●映画評論家の故・水野晴郎氏が日本語タイトルを命名したという、『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』。

映画の原題は『A Hard Day’s Night』といい、ジャーンというあの印象的なギターで始まる名曲のタイトルでもある。

●『こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』もそれと同じギター音 “ジャーン”ではじまる映画。
この週末で終演予定だったが、大ヒット中でムーブオーバーが決まったそうだ。

●ザ・ピーナッツと並ぶ双子姉妹歌手として1960年代に人気となり、紅白歌合戦にも何度か出た。レコード会社の反対を押し切って「こまどり姉妹」の芸名をつける前までは並木栄子・葉子というありふれた芸名だった。
一般公募し、無数に集まったコンビ名の中から、二人が直感で「こまどり姉妹」に決めたという。
1960年代前半、私はまだ子供だったので二人のファンというわけではなかったがテレビで二人を観ない日はなかった。

●今月、ある映画好きの方から、「とにかく面白いし感動する映画ですよ。いま私が一番注目の映画!」と言われ、さっそく私も『こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』を観に行こうと思った。
こまどり姉妹が今も現役で日本中を旅しながら歌っていると聞いて興味がわいたからだ。

●ネットで調べてみたら、こまどり姉妹は1938年(昭和13年)2月16日北海道厚岸郡厚岸町で炭鉱労働者をしている父親の双子として生まれた、とあった。
つまり、70才を超えるお二人が今も現役で舞台に立っている。いったいどんな顔でどんな歌声なのか興味がでてきた。

●映画は一日一回の上映で、朝10時封切りだという。さっそく翌々日、観に行った。
75分程度の短いドキュメント風映画。
ビートルズの「A Hard Day’s Night」のジャーンのあと、こまどり姉妹の姉の声、「私たちは歌が好きだからこの仕事をやってきたのとはちがうんです」というセリフが流れる。

●一家四人がその日のご飯を食べるのに苦労し、個人宅を回って歌をうたってお金をもらう日々。当時子供だった二人は、両親が歌っている姿をうしろから眺めていた。

●だれも歌を聞いてくれないどころか、玄関先で追い返される。ある家でようやく家の中から人が出てきてくれた。
「そこにいる二人の子が歌うのなら聞いてあげてもいいよ」と言われた。それが実質上、「こまどり姉妹」のデビューの瞬間だった。

●彼女たちは、日本のソウルミュージック「民謡」を唄った。
歌好きというより、親を喜ばせたい一心で一生懸命歌ったら、各地で歓迎され、親も喜んでくれた。そうしてネオン街の流し歌手になり、やがてメジャーデビューし、徐々にビッグネームになっていく。

●彼女たちが国民歌手になっていくプロセスで、好事魔多しというべきか。

パンフレットにこうある。
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貧困、華やかな芸能界デビュー、過激なファンによる殺傷事件、マスコミからのバッシング、脱税、闘病、未婚の母、宗教への傾倒、裁判、スキャンダルには事欠かない。芸能マスコミの格好の餌食として話題を提供してきた日々。そして華やかな取り巻きたちの離散。あらゆる逆境に見事肩すかしをくらわせてきたのが、この二人だ。

かつてのアイドルは、今や全盛期のような声も出ないし、当然のことだが、容姿も時を重ねたことを物語っている。しかし、今や二人は円熟した現役バリバリのエンターテイナーに変貌した。それはまるでストーンズのようだ。容姿は衰えても、ミック・ジャガーがそうであるように年を乗り越えるパワーを身につけている。
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●日本のローリング・ストーンズ、ここにあり。こんな70代も悪くない。
今になってファンになってしまったのか、映画館の売店で売っていた姉妹のベストアルバムを買ってiPhoneに入れた。

★こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!
→ http://www.komadorishimai.com/