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“希望が持てる政権”

●さて、民主党にとって悲願の政権奪取。おめおめと今度の総選挙で政権を明け渡したくはないはずだ。最低でも二期・8年は政権を維持しないことには、その効果をはかることができない。それには来年に予定されている参議院選挙に是が非でも勝っておかねばならない。

●だからマニフェストを次々に実行しようとしていることは皆さんご承知の通りである。
さて、民主党のマニフェストが実行されると何が変わるかを知っておこう。子育て支援やダム問題、JAL再建、羽田空港ハブ化問題など、一部の話題だけが先行しているが、「民主党マニフェストの最大の眼目は中小企業対策である」と語る論客がいる。

●その人は、株式会社セントラル総合研究所の社長、八木宏之さんである。彼はつい最近まで、民主党鳩山事務所でひらかれる議員勉強会に講師として招かれている。
事業再生スペシャリストとして、これまで7000社の事業再生に携わり、中小企業経営の実態を酸いも甘いも知り尽くしている氏の生の声を聞こうというわけだ。そんな彼らが今、現職の大臣などの重要閣僚になり、自民党政権とはまったく異なる発想で中小企業を救おうとしている。

●具体的になにがどう変わるのか、八木社長にお話を伺ってきた。今日と明日の二日間にわたってその様子をお伝えしたい。

<以下、対談の模様>

武沢:お久しぶりです。以前はあるパーティでお会いしましたね。
八木:どうも、その節は。
武:さっそくですが、八木社長は最近、「中小企業経営者には明るい希望がもてる政権が誕生した」と語っておられますが、そのあたりからお聞かせください。
八:わかりました。まずその前に、現状の景気動向はまだまだ厳しく予断を許さない状況にある。年末商戦の12月には景気の二番底がくるという見通しも出ている。
武:そうなんですか
八:だからといって来年以降に悲観する必要はない。なぜなら、民主党が掲げるマニフェストの最高の目玉は中小企業支援だから。日本経済のダイナミズムを支えてきた中小企業こそ元気になってもらわねばならぬ。にも関わらず自民党政治がやってきた政策は△型のものだった。
武:△型とは?
八:要するに大きなピラミッドですよ。広く底辺から高い税率でお金をいったん中央に吸い上げ、それを再び経団連や同友会などの財界や大企業を厚く保護し、徐々に下へ環流していく政策が△型。
武:完全無欠の社会主義体制ですね。(笑)それが自民党の政策ならば、民主は何型?
八:私は☆型と思っている。☆の連合体、星雲型というべきかもしれない。つまりは、もう中小企業は大企業のおこぼれを待ち、銀行の言いなりになるのではない。日本が目指しているのは、イタリアやスウェーデンのような中小企業王国だと考えるべきだ。私は活力にあふれた中小企業が増えることを思うと、体内に熱いアドレナリンが駆けめぐる。
武:明治維新に匹敵する改革が始まったと考えてよいか?
八:良いと思う。
武:ものごころついた時から日本は、大企業がうるおうことで中小企業もうるおうという構図がずっと続いてきた。だが今後は、中小企業がうるおうことで大企業がうるおう、となるのだろうか?
八:そうなる。ただし、いつの世でもそうだが、じっと待っていたらそうなるものでもない。民主党の政策はあくまで中業企業が自立しやすくする支援なのであって、自立する気概と目標をもたない企業経営者と従業員には何も起きないだろう。
武:マニフェストの中味について語ってほしい
八:まず「マニフェスト35、中小企業減税」だ。中小企業の税率が18%から11%に引き下げられる。また、一人オーナー会社の役員報酬が損金(経費)として認められるようになる。
武:税率が下がることがそんなに大きい変化なのだろうか?
八:実はこれが非常に大きい。まず、中小企業経営者でちょっと計算高い人であれば、少々の黒字を出すくらいなら赤字決算にしたほうが総合的にお得だと知っている。だから黒字が出ない程度の給料を取り、その結果、会社の自己資本比率は低く放置されてきた。銀行もそれを承知で会社を評価し、金を貸してきたわけだが、今回の減税で黒字のほうがお得という新常識が生まれるようになるだろう。
武:税率11%は諸外国からみてどうだろう?
八:タックスヘイブンの国よりはまだ高いが、おおむね外国の平均値に近づいた。この減税によって、黒字体質で好財務の中小企業を創出し、過半数が赤字決算という現状を変えることになるだろう。
武:もうひとつの役員報酬の損金計上が本当に可能になるのか。
八:そうなる。法人税率が下がることで法人に利益を残す方が魅力的だとなれば、自分の報酬額で利益操作する必要もなくなるだろう。
武:なるほど
八:「マニフェスト36.中小企業憲章の制定など、中小企業を総合的に支援する」というのもある。
武:その意味は
八:EUでは2000年に中小企業憲章を打ち立てた。中小企業こそ欧州経済のバックボーン、主要な雇用の源、ビジネスの発想を育てる大地と認識し、様々な施策がとられている。だから、勇気ある起業家が続々と出始め、将来の不安と心配よりも明るい希望をもって各自の本業に打ち込める体制が整ってきている。民主党政権でも、そうした中小企業憲章をまとめあげ、国家戦略として中小企業を支援するつもりだ。
武:「中小企業省」をつくるとも報じられているが
八:それはすでに公約になっている
武:モラトリアム、貸し剥がし問題はどんな決着になりそうか?
八:銀行への支払を待って欲しい、という声が圧倒的に多いのなら有効かもしれないが、現実はそれほどでもない。だから返済猶予を必要とする企業と個人は今までと同じく、リスケ(返済計画の変更)すればよい。金融機関にはリスケの申込み書類があり、基本的にそれを拒めないことになっている。
武:リスケには応じてくれてもそのあと、貸し渋りと貸し剥がしされたら無意味に思うが
八:その通り。だから、亀井大臣のモラトリアム法案は形をかえて、貸し渋り・貸し剥がし対策法案になるだろう。その方が中小企業経営者にとってメリットが大きいはずだ。

●紙面が尽きたので今日はここまで。続きはまた明日。

尚、民主党マニフェストで中小企業がどう変わるかについては、八木社長ご自身が書かれた本にも載っている。先週発売ホヤホヤのこの一冊を読んで、来年以降に大きな期待をしようではないか。

●『民主党政権で中小企業はこう変わる!』 (八木宏之著)という。

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