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華僑の教え

最近読んでおもしろかった本に『失敗のしようがない華僑の起業ノート』がある。著者の大城太氏が華僑の大物に頼みこんで弟子入りし、そこから学んだ華僑の智慧が124個紹介されている本だ。

「華僑」と聞くと、相互に助け合う人脈ネットワークというイメージだけが先行している。だが、華僑だけに伝わる成功の黄金律のようなものがあり、それがしっかり伝承されているところに彼らの強みがあると作者。その内容は西洋の常識とも日本の常識とも異なる。私もこの本を読んで少し違和感を感じたが、「なるほどなぁ」と思った箇所もかなりある。そうしたところに付箋を貼っていったところ、19箇所にもなった。

華僑の教えは、華僑ではない中国人ビジネスマンの常識ともずいぶん違うようだ。この本を読む限り、華僑の常識はどちらかというと日本の常識に近い印象をもつ。今日は19個の付箋のなかから幾つかをあなたとシェアしてみたい。

「ダブルブッキングも使いよう」

食事の約束でレストランに行くと、そこに見知らぬ人がいた。「せっかくだからあなたにもお引き合わせしたい」と言われても、心のなかは浮かない。だったら最初から言っておいてくれよ、と言いたくなる。だが、華僑の会食では、席に見知らぬ人がいることはめずらしくない。むしろ主催者が良かれと思ってそうした引き合わせをしていることが多く、ダブルブッキングを意図的に行っているといえる。
<武沢所感>
中華料理の円卓がダブルブッキングをしやすくさせている面もあろうが、日本の会食もダブルブッキングが多くなってこれば、もっと経済もダイナミックになるかもしれない。

「生産者と消費者」

生活者の暮らしは生産者の時間と消費者の時間とで成り立っている。例えば月曜日から金曜日までは生産者(仕事をする人)として暮らし、週末は消費者(お金を使う人)として暮らすという具合。消費者だけをやっているという人は専業主婦と子供だけ。したがってモノを売るときには生産者としてのメッセージやストーリーを語って共感を得ることが大切なのだが、問題はその方法。苦労話や自慢話を押しつけられると、誰もが日々生産者として暮らしているので重くなりすぎてしまう。感動秘話のようなエピソードを押しつけるよりは、明るく夢のあるメッセージの方が受け入れられやすいことがある。
<武沢所感>
たしかに傾向としては、お涙頂戴のメッセージよりは、楽しい、明るい、面白い、スキッとする、というメッセージの方が受け入れられやすいように思う。

「社長が潤わなければ従業員を守れない」

日本では家族主義経営が進んでいるので、ときには社員を守るために社長が自分の給料を取らない、というようなことがある。だが、親が死ねば子は救えない。飛行機の救命マスクもまず親が付け、そのあとに子供に付けさせるべきだと教えているが、それと仕事の報酬は同じである。会社の連帯保証人になっている社長がまっ先に潤わなければ会社も社員も守れなくなる。問題は社長の報酬の多さをどう説明するか、である。説明できずにいると、「社長だけ贅沢している」「自分たちの労働は不当に搾取されている」と思った社員が不正を働くようになる。社長が潤うことは個人的な快楽を得るためではなく、会社の存続と社員の雇用を守るためであることを説明し、みずからそうした生活態度を貫くことが大切である。
<武沢所感>
このあたり、まったく同感で一切違和感がない。

「社長の人格と個人の人格を使い分ける」

社長と個人、ふたつの人格を同一視してしまうといろんな弊害がでる。たとえば、自分の会社なんだから自分のワガママばかり通そうとすると優秀な人材が去っていく。個人的に温厚で優しい性格だから、会社経営でも優しくばかりしているとあっという間に資金を使い果たす。「あるべき社長像」という一貫したイメージをもち、それにふさわしい人格で経営することが会社をピンチに陥らせない工夫なのである
<武沢所感>
まず自分に厳しくする、次いで社員にも厳しくする。それができる社長は会社をピンチにすることはないだろう。自分にも社員にも甘い社長が会社を窮地に追いこむ。

こうしてみると、極めてオーソドックスな教えばかり。だが、このあと徐々に華僑らしさが出てくる。

<明日につづく>

失敗のしようがない華僑の起業ノート
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