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続・夢一と夢二

●先週木曜日号の続き。

兄の夢一専務は朝礼が大切だと思っていた。しかし、半年前までやっていた低いテンションの朝礼には疑問を感じていた。
だから朝礼をいったんやめてしまったわけだが、より良いやり方が見つかれば、また再開したいと思っていた。

その理由のひとつは遅刻問題である。朝礼をやめてから遅刻が増えていた。
もうひとつは、社内の報告・連絡・相談の不徹底。同じ現場に複数の社員が出かけるようなこともたびたびだった。ひと声かけあっていれば決して起こらないような無駄なことである。

●一方、弟の夢二部長は職人肌タイプ。しかも朝に弱いのでそもそも朝礼反対派の急先鋒だった。だから半年前に朝礼がいったん休止されたとき、もっとも喜んだのが夢二部長である。

にもかかわらず兄が朝礼を再開しようとしているのが不満でならない。

●そんな二人が武沢のセミナーを受けにきた。二次会の席で二人は武沢の前に座り、さっそく切り出した。

兄:武沢さん、朝礼についてはどのようにお考えですか。
武:大いにやればいいんじゃないですか。上手にやれば、朝礼は最高のベクトル合わせの場になると思うよ。
弟:「上手にやれば・・」ということは、下手なやり方もあるということですか?
武:もちろんある。お互いにつまらないと感じていることを上司が無理やりやらせるような朝礼はつまらない。やるべきじゃない。
弟:なるほど。
武:大切なのは目的だと思う。主催者は朝礼に何を期待したいのか。それが朝礼参加者のプラスにもなるのであれば、朝礼は自ずと盛りあがるはずだよ。
兄:そんなやり方を我々も今研究しているのですが、武沢さんおすすめの朝礼法ってありますか?
武:「朝礼こそが最高の社員教育である。特に朝のあいさつ練習は仕事の基本中の基本である」という考えで大声あいさつの朝礼を推奨し、成果をあげているのが京都のMKタクシーさんですね。
詳しくはこれ。
http://ganbare.pk.shopserve.jp/SHOP/NB005.html

兄:なるほど、ほかになにか事例がありますか?
武:居酒屋『てっぺん』の日本一の本気朝礼も有名だよね。彼らの若さあふれる情熱に圧倒されるはず。業界の違いを超えて、彼らの朝礼ぶりは大いに参考にすべきだと思う。
詳しくはこれ。
http://ganbare.pk.shopserve.jp/SHOP/NB016.html

弟:武沢さん、ぶっちゃけ、僕は朝礼反対です。なんていうのかな、朝って何となくお互いに不機嫌でしょ。そんな時はお互い、一人にしておいて欲しいって思ってるはずです。
兄:学生じゃないんだから、それはワガママだろ。
弟:いや、みんなそう思ってるはずだよ。
兄:みんなって誰だよ。
弟:まず杉山だろ、高田もそうだし江角も、オレも・・・
武:まあまあ。この際、お互いに楽しくなってしまうような「初夢流朝礼」を考案してみてはどうだろうか?
兄弟:初夢流の朝礼?
武:そう、初夢流の朝礼がいつの日かDVDになって売られるようなもの。
兄:へえ、おもしろそうですね
弟:具体的には?
武:大切なことは、朝からみんな元気になれることだと思う。まずは自然に笑顔が出てくるような朝礼を考えられないだろうか。
兄:自然に笑顔が出るようなことですか。
弟:朝礼で笑顔なんかでるのかなあ?
武:もし朝礼という言葉になにか偏見があるのなら他の呼び名でも構わないと思う。たとえば「朝会」とか「出陣式」とか「軍議」とか。
弟:なんなら「寄席」(よせ)とかでも良いのですか?
武:寄席?お笑いが好きなの?
弟:うちのやつら、お笑い好きが多い。飲み会の時には女の子の話題かお笑いの話題しかでないくらい。
兄:たしかにそうだな。少しは仕事の話をしろ、とツッコミたくなったこともある。
武:だったら朝礼ならぬ、「社内寄席」をやってみたらどうなの?最近一番大笑いしたネタをひとつずつ紹介するもよし、自分が作ったネタをやるもよし、毎日一人順番にやる。それで朝の固い空気をほぐすことができれば、自然にお互いの連絡事項なんかも活発にやりとりできるようになるんじゃないの。
弟:なるほどねぇ、お笑いネタの披露ならやってみたいな。
兄:おもしろい、やってみましょう。

・・・このように二人は「初夢流朝礼」の開発を目指し、「お笑い」を朝礼に取り入れることにした。

半月ほど経ったある日、武沢のもとに兄の夢一からメールが届いた。
それにはこう書いてあった。

「武沢さん、お笑い朝礼がなんとか始まりました。まだまだ明るい朝礼というほどではありませんが、以前の不機嫌な朝礼よりは、はるかに改善されています。何よりも大きな収穫は、弟の夢二がみずから朝礼の進行役を買って出てくれたことです。そして、夢二の遅刻がなくなりました。夢二は朝礼を飲食OKの会にして、まるで朝食会のように世間話でもしながら打ち合わせをやってくれています。笑い声もよく聞こえるようになってきました。内心、仲良し会のような気がして甘やかしているような気分にもなりますが、今のところはぐっと我慢して夢二の進化をサポートしたいと思っています。

最後にご相談ですが、昨日、うちの社員の杉山君がある芸人の苦労話を聞かせてくれて、みんな感動している様子でした。杉山君の話し方も上手だったのもあるのですが、「お笑い」ネタだけでなく「感動」ネタもOKにして大丈夫でしょうか。それと、相変わらずゼロにならない社員の遅刻をなくす知恵がございましたら、おさずけ下されば幸いです」

とあった。

●遅刻する社員をなくすにはどうすべきか。

私は夢一専務にこう返信した。

<あすに続く>