今年満7才になったばかりのよし子ちゃんは掃除が大きらいでした。
おにいちゃんと共同で使っている子供部屋はいつもぐちゃぐちゃに散らかり、居間や食堂もよし子ちゃんが使った場所はどこも見事に散らかっていきました。それはお母さんの悩みのタネでもありました。
●そんなよし子ちゃんがある日、一人で部屋をきれいにしています。
ビックリしたおかあさんが理由をきいてみると、よし子ちゃんはこう答えました。
「だってあした山川先生がおうちへきてくれるんだもん」
そうです。あしたはよし子ちゃんが大好きな山川チヨ先生が家庭訪問にやってくる日だったのです。
●家庭訪問が無事に終わった次の日も、よし子ちゃんはひとりで部屋の片づけをしています。
「きれいにしているほうが気持ちいいもん」とよし子ちゃん。どうやら整理整頓や掃除の喜びを感じ始めたようです。
●おかあさんはとても喜びました。この機会をとらえてよし子ちゃんにきれい好きな女の子になってもらいたいと心から願いました。
そこでおかあさんは一計をめぐらすことにしました。
次の日曜日に親戚のマリエおば様のお宅を訪問することにしたのです。
もちろん、よし子ちゃんを連れて。
●マリエおば様は親戚を代表するきれい好き。よし子ちゃんのおかあさんとマリエおば様は事前に電話で打ち合わせをしていました。
●いよいよ訪問の日がやってきました。
よし子ちゃんは一年ぶりにマリエおば様と再会するので、道中は少し緊張している様子でした。
到着し、ピンポーンと呼び鈴を押しました。マリエおば様がニコヤカに出迎えてくれました。
「マリエおばちゃまこんにちは、よし子です」
元気よくしっかりあいさつができました。
●広々とした明るい玄関先で靴を脱ぎました。すぐに中へ入ろうとするよし子ちゃんにマリエおば様は言いました。
「くつをきれいにそろえてから中にはいりましょうね」
「は~い」
向きを玄関側にそろえて靴を置くこと、できれば中央ではなく、端っこの方に少しずらして置くことをよし子ちゃんは覚えました。
●さりげなく、マリエおば様は靴箱の中をあけました。
そこには、きれいに手入れされた靴やハイヒール、ブーツが整然と並び、お香の心地よい香りが伝わってきました。
「うわぁきれい」とよし子ちゃん。
●靴箱の上には観葉植物がたくさん並んでいて、横にはピカピカに磨かれた大きな鏡がかかっていました。
よし子ちゃんは「玄関と靴箱はこうやってきれいにしておくものなんだ」ということを知って、とてもためになりました。
●次にリビングに通されました。外は暑かったので、ノドがからからに乾いていたよし子ちゃんに向かってマリエおば様が言いました。
「よし子ちゃんのために今日はジュースを7種類も用意してあるわよ。
どれにする?こちらへおいで」とキッチンにある大型冷蔵庫の方へ手招きしました。
冷蔵庫の中をみてまたビックリ。ここもまたきっちりと整理整頓され、使いやすそうにいろんなものが入っていて、とても美しかったのです。
「へぇ、すごい冷蔵庫」
●この日、マリエおば様のお宅を訪問したことで、よし子ちゃんは整理整頓と清掃に関する理想郷を見つけたようでした。
そればかりでなく、その理想の姿を作るために毎日、どのように掃除したらよいのか、整理整頓にどの程度の時間を割けばよいのかも教わりました。掃除用品についてもレクチャーを受けることができて、よし子ちゃんはお掃除することがワクワクすることのように思えてきました。
●毎日掃除すべきところと、曜日を決めて週一回とか二回の掃除で良いところ、半年か一年に一回で良いところなどがあるのだと知って、よし子ちゃんも「おうちでもそうしようよ」とおかあさんに言いました。
●掃除がキライだったよし子ちゃんのターニングポイント
1.人を呼んだ
山川先生という特別なゲストが我が家にやってきたのがきっかけになった。
ゲストが来ると、きれいにしておきたくなる。特にそのゲストが大切な人であればあるほど入念に準備する。
2.理想の姿を実際に見せる
百聞は一見にしかずというように、マリエおば様宅を訪問し、理想像を見学してカルチャーショックを受けた。
3.システムを教える
掃除のやり方、曜日ごとの掃除ローテーションなど、きれいな状態を保ち続ける知恵も教えてあげることで、やがてそれがよし子ちゃんの終生におよぶ習慣になるだろう。
何を教えるにしても、よし子ちゃんが変わっていったこのやり方は使えるはずだ。