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社長の基地

●それって、江葉穂(えばほ)と書くのだろうか?

「”えばほ”の大会があるときは、ここも満室になるのよ」とお掃除のおばちゃん。「そういうのがないと、ふだんは割合いつもヒマ」とも言う。ここは群馬県にある「トロン養生院」で、昨日の午後にチェックインし、ほぼ一日が経過した。ようやくここの様子が分かってきたところだ。

●「えばほ」が気になるので私はおばちゃんに聞いてみた。

私「ところで”えばほ”って何?」
おばちゃん「知らないの?宗教だよ。みんな熱心よ」
私「へぇ、知らなかった。群馬で流行ってるの?」
お「群馬どころかあなた、日本中、いやいや、世界中で有名だけどね」
私「ほぉ、世界中で”えばほ”。どんな字を書くの」
お「カタカナさ」
私「(自分の手のひらにエバホと書きながら)あっ!ひょっとして、エホバだね」
お「あら、エバホじゃないの。エホバなの。ホント?いままで私ゃ、ん十年とエバホ一本で通してきたよ。ハハハハハハハ…」
私「ハハ」

そんなことしか印象に残らないほど、ここは何もすることがなく静かだ。コンビニは歩いて30分だというので断念した。こうなれば、間食は断固絶つしかない。

●昼間は近所のお年寄りやグループ旅行客がここのトロン温泉を楽しみにやってくる。
時間帯によってはそうしたお客で賑わうが、それ以外の時間はシーンと静まりかえっている。岩盤浴とマッサージは別料金だがトロン温泉とフィットネスは利用し放題。
食事は玄米おかゆだったり、古代米がお茶碗にほんの少しだったりする。あとは生野菜のサラダとお茶だけ。それでも残してしまうほど、小食に慣れる。

●昨夜の宿泊客は私を含めて二人だけ。しかもお相手は若い女性だった。
夕食の時にその方とテーブルをご一緒したが、20代半ばの経営者で、横浜には30人の社員がいるという。
お見受けしたところ断食の必要がまったくなさそうな体形をしておられるが、ここには二度目の訪問でここに来るのが気に入っているそうだ。

●夕食を済ませ、私はトロン温泉に浸かったあとサウナウエアに着替えて岩盤浴に入る。
すでに先客がひとりいた。先ほどの彼女だ。

「ここの岩盤浴、ちょっとぬるくありません?」と聞かれたが、私は他を知らない。
「失礼します」と隣に横になって世間話を始めたが、彼女の新しい仕事のアイデアに話題が及んでから一気に会話がヒートアップした。

●完全に貸し切り状態だった。二人とも、まるでがまん大会のようにアセをぬぐいながら時には上半身を起こし、時には仰向けに倒れ、時にはうつぶせになって議論し、最後はどちらからともなくギブアップしてそこを出た。
25分が基本コースの岩盤浴なのに1時間半もそこにいたようだ。フラフラだった。

●意外なことにロビーの自販機にはビールも売っている。それを一本買い込んで部屋に戻り、テレビをつけることもなく読みかけの本を読みはじめ、10分もしないうちに本を枕に就寝した初日。

●二日目の今日は、昨夜遅くチェックインしたという私と同年代の男性経営者が加わった。

彼はオマーンで石油の代替エネルギーをビジネスにしているそうで、最近大手石油会社を退職して起業したばかりだという。
駐在員時代からオマーンでの生活は長く、起業もオマーンで行う。
今、一時的に帰国しているが、この「トロン養生院」を知ったのは先月のこと。ここへ一週間泊まって5キロの減量に成功した。東京に戻ってからもその体重を維持しているという。
それに気をよくして今回、もう一週間ここへ来て、もう一段絞りたいという。熱海や伊豆などいろんな断食施設を利用したが、ここが一番コストパフォーマンスが高いそうだ。

●東京からちょうど一時間、あと一駅で「軽井沢」。ここは首都圏の経営者にとってちょっとした隠れ家になるのかも知れない。
「社長の基地」としてあなたも一度試されはいかがだろう。私は現時点でまだ推薦もだめ出しもしないニュートラルだ。

■トロン養生院 私の現時点の評価

良い点

・安い(個室料金で一泊6,500円、三食付き)
・全時間自由(食事時間以外は全部自由、ビール自販機まである)
・トロン温泉も岩盤浴もフィットネスも深夜以外なら好きな時間に利用し放題(岩盤浴とマッサージは別料金)
・宴会場のような大広間もあるのでグループで会議や研修ができる
・トロン温泉は身体に効きそうな気がする
・スタッフが親切

欠点

・値段相応なのだが、部屋の造作が割合チープに思える
・部屋にトイレがない。外にあってウォシュレットがない1階の一般客フロアのトイレにはウォシュレットあり、洗濯機も無料利用できる
・無線LANがロビーでしか使えないので、部屋では通信カード利用
・温泉は天然温泉ではなくトロン温泉(人工温泉)

★トロン養生院 http://www.toronshinyu-onsen.jp/fasting/index.html